2010 Fiscal Year Annual Research Report
ワイドバンドギャップ半導体シリコンカーバイドを用いたフォトニック結晶に関する研究
Project/Area Number |
10J06649
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 翔太 京都大学, 工学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | SiC / フォトニック結晶 / 二光子吸収 / ナノ共振器 |
Research Abstract |
本年度は、SiCフォトニック結晶共振器においてハイパワー光に対する安定動作の実証を行った。従来材料のフォトニック結晶共振器では、Q値(光の閉じ込めを表す指数)が高くなればなるほど、二光子吸収などの非線形現象が顕著になり、光の損失が大きくなってしまう。一方、今回提案するSiCでは十分大きいエネルギーギャップを有するため、高Q値ナノ共振器においてもこのような光の損失が起こらず、安定した動作が期待できる。しかしながら、現在実証しているSiCナノ共振器のQ値はまだ数百程度であり、これは従来のSiにおいても非線形現象が問題となるようなQ値ではない。そのため、まずはSiCフォトニック結晶共振器のQ値を増大させる必要があった。共振器の高Q値化のための手法として、異なる格子定数を階段状に接続することにより、共振モードの電界分布の包絡線を制御すればよいことが知られている。この構造をSiCフォトニック結晶共振器に適応し、設計パラメータを最適化することで、最高でQ値10,000をもつSiCナノ共振器を作製することに成功した。このようにして得られた高Q値ナノ共振器に対して、非常に大きなピークパワーをもつ超短光パルスレーザを入射し、共振器特性を評価およびSiナノ共振器のそれと比較・検討を行った。その結果、従来のSiフォトニック結晶の100倍に相当する高エネルギー光に対しても、二光子吸収効果の抑制を実証することに成功した。本成果は、光通信帯域のハイパワー光をも取り扱える、安定な波長分合波デバイスや光バッファメモリ等の実現につながり、非常に有用である。さらに本研究の過程で、SiCフォトニック結晶共振器における第二高調波発生の観測にも成功しており、非線形現象を積極的に応用した波長変換などの新たなナノフォトニクスの分野を切り拓くという意味においても、大変意義深い。
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