2011 Fiscal Year Annual Research Report
ワイドバンドギャップ半導体シリコンカーバイドを用いたフォトニック結晶に関する研究
Project/Area Number |
10J06649
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 翔太 京都大学, 工学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | SiC / フォトニック結晶 / 可視光 / ナノ共振器 |
Research Abstract |
本年度は、可視光領域で動作するSiCフォトニック結晶を新たに実証するべく、可視領域フォトニック結晶の設計・作製の最適化および測定方法の開発について取り組んだ。一般に、スケーリング則にあるように、可視領域フォトニック結晶を実現するには、赤外領域におけるフォトニック結晶の基本的な設計はそのままで、サイズを縮小するだけでよい。しかし、サイズを小さくすることで作製がより困難になるため、微細加工技術をさらに向上させる必要がある。これに関して、具体的にはマスクの薄膜化やプラズマエッチングの条件の最適化を行った。また、構造ゆらぎなどの損失や屈折率の波長依存性なども考慮しなければならず、それらを含めてフォトニック結晶の設計の最適化を行う必要があった。さらに、可視光領域におけるフォトニック結晶の測定方法はまだ確立されていなかったため、広帯域な光が得られるスーパーコンティニウム白色光源を適応し、可視フォトニック結晶の測定方法を開発した。このような取り組みによって、申請者は最終的に、一枚の基板に様々な格子定数(150-600nm)をもつSiCフォトニック結晶共振器を作製し、550-1,450nmという可視光領域を含めた非常に広い波長帯域において、共振器のドロップ動作を実証することに成功した。この結果は、単に従来のフォトニック結晶材料では成し得なかった可視光線の制御を可能にしたというだけでなく、将来的には可視光でのみ利用できる純粋な量子発光体である孤立原子やN-v ceneter、高効率コロイド量子ドットなどと、ナノ共振器との相互作用の実現につながるなど、量子力学的な興味の観点からも非常に意義深い。また、本成果は米科学誌Applied Physics Lettersにおいて公表され、かつ同誌の表紙を飾るなど、世界的にも大きな注目を集めていることからも、その重要性は明らかであると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、可視領域フォトニック結晶の設計・作製の最適化や測定方法の開発を行い、550~1,450nmという可視光領域を含めた非常に広い波長帯域において、SiCフォトニック結晶共振器のドロップ動作を実証することに成功している。しかしながら、その短波長化にはまだ150nmほど余地が残されており、また多波長分合波デバイスのような応用に向けても、理論・実験の両面から研究開発を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、今回得られた可視領域フォトニック結晶をさらに発展させ、可視領域における超小型分合波デバイスの開発を行う。また、発光効率の高いコロイド量子ドット(CdSe/ZnS)やN-V centerと呼ばれる特異な欠陥準位などの可視光のみに発光ピークを有する発光体とSiCフォトニック結晶を融合し、電子・光子相互作用の物理の解明や新たなデバイス応用を目指して研究を行う。
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Research Products
(8 results)