2012 Fiscal Year Annual Research Report
農業水域に生息する魚類個体群の保全遺伝生態学的研究
Project/Area Number |
10J06719
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
西田 一也 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究所・資源循環工学研究領域, 特別研究員(PD)
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Keywords | 農業水域 / 淡水魚 / 遺伝的集団構造 / 遺伝的多様性 / 在来・非在来 |
Research Abstract |
当該年度は,全国スケールにおけるアブラハヤ・タカハヤのミトコンドリアDNA(mtDNA)Dloopの解析を行った.解析には33地点281個体の957bpを供した.ハプロタイプ(配列の種類)を基に系統樹を作成して,各地域で得られたハプロタイプ間の類縁関係を把握した. 系統樹はまずタカハヤとアブラハヤに分かれ,両種間の平均塩基置換率は5.8%であった.タカハヤのハプロタイプは地理的にまとまったクレードを形成し,それらのクレード間の平均塩基置換率は1.1~2.4%であった.アブラハヤのハプロタイプにも地理的にまとまったクレードを形成するものが存在したが,なかには地理的にまとまらないハプロタイプもみられた.地理的にまとまったクレード間の平均塩基置換率は1.1~2.6%であった.仮に一般的な動物のミトコンドリアの進化速度とされる100万年当たり2%の塩基置換(Brown et al., 1979)を適用すると,アブラハヤとタカハヤはおよそ290万年前(鮮新世)に分化し,タカハヤとアブラハヤそれぞれのクレードはおよそ55~130万年前(更新世中期~前期)に分化したと推定された. 関東地方で得られたタカハヤのハプロタイプは琵琶湖・淀川水系と同じクレードに属したことから,関東地方のタカハヤは同水系からの移植に由来する。と考えられた.また,アブラハヤについても,地理的に離れた東北地方と琵琶湖・淀川水系のハプロタイプが同じクレードに属したことから,同水系からの移植があった可能性も示唆された. なお,アブラハヤとタカハヤの共存水域で得たサンプリング個体の中には,ごく少数ではあるが,両種の交雑により生じたと考えられる個体が存在したことから,アブラハヤとタカハヤおよび交雑個体を簡便に判別する方法として,RAPD分析による両種および交雑個体の判別方法を開発した.
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Research Products
(2 results)