2011 Fiscal Year Annual Research Report
EGFレセプターの二量化阻害を基盤とするペプチド性抗がん薬リードの創製
Project/Area Number |
10J06748
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
水口 貴章 京都薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | EGFレセプター / 二量化阻害 / 医薬分子設計 / 構造活性相関 / 抗がん薬 / ペプチド / 相互作用解析 / 表面プラズモン共鳴 |
Research Abstract |
上皮成長因子(EGF)レセプターは、多くのがん細胞で過剰発現しており、その無秩序な活性化が細胞の増殖や増悪に関与していることから、抗がん薬開発の分子標的となっている。しかしながら、すでに開発されたキナーゼ阻害薬や抗体医薬は、副作用や薬剤コストなどの面で満足できるものではない。本研究では、EGFレセプター活性化過程における重要なイベントである『二量化』を阻害するという新たな戦略を持った抗がん薬リードの創製を目指している。申請者は、過去に、EGFレセプターの二量体界面に存在するβヘアピンアームの先端を模倣した環状ペプチドが、レセプターの二量化を抑え、かつ、その活性化(自己リン酸化)を阻害することを見出した。そこで今年度は、この二量化阻害環状ペプチドをもとに、さまざまな環状ペプチドを設計・合成・評価を繰り返しながら構造活性相関研究を行った。環の大きさが異なる環状ペプチド、環状ペプチドのN末端およびC末端側にアミノ酸を数残基付加したペプチド、非天然のアミノ酸を組み込んだ環状ペプチドを検討したところ、10残基のアミノ酸から成る環状デカペプチドがEGFレセプターの二量化を最も阻害することを突き止めた。また、この環状デカペプチドに含まれるアミノ酸側鎖の構造およびその配向が、EGFレセプターとの相互作用に大きく寄与していると推察された。今後、コンピューター上でEGFレセプターの結晶構造を精査し、さらなる環状デカペプチドの改変体を設計し、EGFレセプター細胞外領域に対し、特異的な作用を示すペプチドを創り出す予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度実施した環状ペプチドの構造活性相関研究より、EGFレセプターの二量化阻害を示すには、環状デカペプチドという構造が最適であることが判明した。また、EGFレセプターとの相互作用には、環状デカペプチド中のアミノ酸側鎖が大きく寄与していると推察された。これらの情報は、阻害活性の向上を目指した更なる構造活性相関研究におおいに役立つと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、申請者らの研究室で稼働している統合計算化学システムソフトウェアを用いて、コンピューター上でEGFレセプターの結晶構造を精査し、レセプター細胞外領域のドメインIIに対して特異的に結合することで二量化阻害を示す環状デカペプチドの改変体を創り出す。この改変体には、非天然アミノ酸や非ペプチド型構造の積極的な導入を検討し、より強い二量化阻害剤への改変を図る予定である。
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