2010 Fiscal Year Annual Research Report
ペーパー固定化イオン液体を均一系反応場とする新規構造体触媒の機能創出
Project/Area Number |
10J06787
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古賀 大尚 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ペーパー構造体触媒 / セルロース / シランカップリング / イオン液体 / 固定化酵素 / リパーゼ / 非水系酵素反応 / マイクロリアクター |
Research Abstract |
近年、触媒材料開発において、触媒周辺の物質・熱移動を司る担体構造の重要性が認識されている。本研究では、身近な生活素材である「紙(ペーパー)」特有の繊維ネットワーク空隙構造体を触媒反応場とみなした「ペーパー構造体触媒」の開発を進めている。ペーパー構造体触媒は、燃料電池用水素製造(メタノール改質)や排ガス浄化(NOx還元)などの重要な固-気触媒プロセスにおいて、従来の触媒材料を大幅に上回る反応効率を達成した。これは、ペーパー構造体が優れた反応場として機能することを強く示唆するものであり、更なる機能開発・応用展開が期待される。 本年度は主に、無機機材の機能化法として知られるシランカップリング法を応用し、セルロース濾紙の機能性官能基修飾と触媒応用を検討した。シランカップリングにより調製したイオン液体修飾セルロース濾紙は、導電性を有していた。イオン液体は、金属錯体や酵素などの均一系触媒を固定化する足場または反応場として機能し得ることから、今後の応用に期待が持たれる。また、アミノ基修飾濾紙が優れた塩基触媒として機能することを明らかにした。さらに、セルロース濾紙に導入したメタクリロキシ基をリパーゼ固定化の足場とすることで、新規な紙状固定化酵素の開発に成功した。メタクリロキシ基修飾セルロース濾紙固定化リパーゼは、非水系溶媒中におけるリパーゼの失活を抑制可能であり、極めて優れたエステル交換反応効率を達成した。驚くべきことに、フロー式プロセスに供した場合、バッチ式における反応効率を大きく上回る現象が確認された。このことから、紙特有のマイクロ空間が反応基質の高速拡散・混合を促進することで反応効率の向上に寄与する、すなわち、日常にありふれた紙材料が触媒分野で注目のマイクロフローリアクターとして機能することが示唆された。今後、紙のマイクロ空隙構造を利用して触媒反応効率の向上を図る「Paper-based Microfluidic Catalysis」の概念の確立に向けた実証研究に注力する予定である。
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Research Products
(12 results)