2012 Fiscal Year Annual Research Report
ピコ秒時間分解軟X線光電子分光装置の開発とそれを用いた表面ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
10J06870
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小河 愛実 東京大学, 物性研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 光電子分光 / 表面 / 光誘起起電力 / ダイナミクス |
Research Abstract |
本年度は、昨年度までに開発した時間分解光電子分光装置を用いて、半導体表面における光誘起ダイナミクスの研究を行った。半導体表面では、結合が切れて表面状態が形成されている。その表面キャリアを補償するために、バルクから表面に駆けてバンドが折れ曲がっている。表面に光が当たると、キャリアが励起され、その光誘起キャリアは半導体内部のポテンシャルに従って分布する。n-typeの場合、ホールが表面側にたまり、電子はバルク側に蓄積され、キャリアの空間分布が出来る。この新しいキャリア分布が表面団かを補償し、バンドの折れ曲がりは必要なくなり、バンドはフラットになる。このバンドの平坦化を表面光起電力効果と呼び、本研究ではこの緩和過程を詳細に観測した。 その結果速い緩和と遅い緩和の2種類の緩和過程を発見した。この2種類の緩和過程の物理的なメカニズムを解明するために、8種類の表面を用意し、半導体表面に関するパラメータを変化させながら系統的にこの2つの緩和過程の変化を調べた。その結果、速い方はキャリアが表面ポテンシャルをトンネル効果で通過する過程、遅い方は熱励起過程であると同定した。この2種類の過程に着目して緩和過程を詳細に調べたのは初めてだ。また、トンネル効果を用いて、表面光起電力のダイナミクスを解析したのも初めての試みである。 また、緩和過程の励起パワー依存性を系統的に調べ、励起パワーを上げて行くと、振動現象を発見した。 当研究ではこの現象を非線形微分方程式を用いて解析し、線形応答だけを考えていては、振動現象を説明できないことを示した。詳細な現象の解明には、更なる研究が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
開発した装置は、トラブルなく動き、これまで発見できなかった新奇な現象を発見することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
発見された新奇な振動現象の理論的な記述を強化する。
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Research Products
(2 results)