2010 Fiscal Year Annual Research Report
SAM及び電子線描画を用いた微細パターン・加工によるグラフェン電子状態制御
Project/Area Number |
10J06912
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
横田 一道 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | グラフェン / 電子物性 / 自己組織化 / 光電子分光 / ラマン分光 / 電子状態計算 |
Research Abstract |
本研究の目的は、パターン化された自己組織化単分子膜(SAM)を用い、グラフェンの任意の位置での、任意の電子状態制御を実現することである。本年度は、様々なSAM上のグラフェンについての電子物性評価を行った。 まず、シランカップリング剤[R-(OR')_3,R'=C_2H_5,CH_3]を用いて、SiO_2基板上にF_<13>-SAM(R=C_6F_<13>_C_2H_4)、C_8-SAM(R=C_8H_<17>)、NH_2C_3H_6-SAM(R=NH_2C_3H_6)、及びNH_2C_6H_4-SAM(R=NH_2C_6H_4)を作製した。SAMの形成は、接触角測定、AFM観察、及びXPS測定によって確認し、更にXPS測定からは、分子種に対応した電気双極子の形成が示唆された。これらは、NH_2C_3H_6-SAMとF_<13>-SAMではN及びFの誘起効果によって、NH_2C_6H_4-SAMでは=MH_2^+基の共鳴効果によって生じたものと考えられる。 次いで、SiO_2基板及びSAM修飾SiO_2基板上にへき開法によってグラフェンを転写し、大気中にてラマン分光測定を行った。SiO_2基板上グラフェンでは、G-バンド、2D-バンドが、それぞれ1580cm^<-1>と2669cm^<-1>に観測された。SiO_2上グラフェンと比較して、C_8-SAM上グラフェンではこれらのバンドが若干の高波数シフトを示したのに対し、NH_2C_3H_6-SAM及びF_<13>-SAM上のグラフェンでは大きな高波数シフトが観測された。一方、NH_2C6_H_4-SAM上グラフェンでは、SiO_2上グラフェンのものに対して低波数シフトを示した。これらを、振電相互作用をもとに解析した結果、F_<13>-SAM上グラフェンではキャリア密度が10^<14>cm^<-2>に達する巨大なホールキャリアが生じ、NH_2C_6H_4-SAM上グラフェンでは、大気中分子吸着由来のホールを補償する程の電子キャリアが誘起されていることが分かった。この結果は、XPSから予測された電気双極子の傾向と対応し、密度汎関数法(DFT)を用いた電子状態計算とも一致した。 以上の結果は、SAMの電気双極子による静電ポテンシャルによって、グラフェンのキャリア制御が可能であることを示しており、SAMの分子設計によるグラフェンの電子状態制御を、実験・計算の両面から実証した重要な知見である。
|
Research Products
(3 results)