Research Abstract |
本研究では,プラズマ技術の医療・バイオ応用として,プラズマ照射を用いた微生物及び細胞の活性制御を目的としている.具体的にはプラズマ照射を行う事で細胞増殖の促進・抑制を行い,動物細胞では臓器移植分野での応用を,植物細胞では収量の増加,発芽時期の制御等を実現する.今年度は,開発した大気圧プラズマ照射装置を用いて,動物細胞に似た性質を持つ酵母の増殖促進を試みた.実験に使用した酵母は乾燥状態のドライイーストである.照射した酵母は培地と懸濁後,マイクロプレート上で培養を行い,吸光度を測定することで増殖能を調査した.酵母に大気圧プラズマを照射した場合,酵母が活性化され培養開始から増殖を開始し,増殖曲線における遅滞期が無くなる傾向を示した.また,50秒照射した場合,未照射酵母と比較し最大3倍吸光度に差が見られた.さらに,照射時間の増加に伴い増殖は抑制(不活化)される傾向を示した.この事からプラズマ照射の場合,酵母の増殖を促進させるしきい値が存在することが分かった.また,放電によって生じる光のみをガラス板越しに酵母へ透過させた場合,成長の変化は確認されなかった.このことから,成長促進はプラズマから光の効果ではなく,プラズマ中に生成された活性種により得られる事が分かった. 今後は数種類のガスを用いて,放電によって生じる活性種の定量を行い,生じる活性種量に対する酵母の増殖特性を調査するとともに,酵母内部で生じる活性変化を試薬等用いて調査する.
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Strategy for Future Research Activity |
プラズマ照射により細胞増殖が促進される場合,細胞内でどのような変化が生じているのかを調査する必要がある.対策として,まずモデル生物にプラズマ照射を行い遺伝子解析やたんぱく量調査を行い,変化する遺伝子,たんぱくの同定を行う.同時に試薬を用いて,細胞内で産生される活性種(活性酸素・窒素)の定量を行う.最終的にプラズマが細胞増殖を加速させる反応経路を明らかにする.
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