2011 Fiscal Year Annual Research Report
塵粒子集合体の電気力学及び構造力学的進化が駆動する微惑星形成
Project/Area Number |
10J07006
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
奥住 聡 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員-SPD
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Keywords | 惑星 / ダスト / 原始惑星系円盤 / 乱流 |
Research Abstract |
円盤ガスの磁気乱流が誘起する塵粒子集合体の衝突破壊は、微惑星形成に対する重大な障壁の1つである。しかしながら、微小な塵粒子が豊富に存在する状況下では、塵粒子の帯電によって磁気乱流は安定化されることが知られている。したがって、微惑星形成経路の解明のためには、微小な塵粒子の存在とそれによる乱流の安定化を正しく考慮することが非常に重要である。 本研究員は、海洋研究開発機構の廣瀬重信主任研究員と共同し、磁気乱流の強度が微小な帯電塵粒子の存在量と円盤を貫く磁束量の関数としてよく記述できることを磁気流体シミュレーションから解明した(Okuzumi&Hirose 2011)。さらに、得られた経験則を利用して、塵粒子集合体の衝突に伴うサイズ分布の進化を磁気乱流の進化と同時に追跡するという世界で初めての数値シミュレーションを実施した。この結果、円盤を貫く磁束が小さい状況下では、微小な塵粒子が磁気乱流を十分に安定化し、より大きな塵粒子集合体を大規模な衝突破壊の危険から防ぐことを明らかにした(Okuzumi&Hirose,論文執筆中)。このことは、塵粒子の広いサイズ分布を正しく考慮することが微惑星形成の理解にとって本質的に重要であること、そして原始惑星系円盤を貫く磁束の量が円盤内での微惑星形成に決定的な影響を与えることを示すものである。 また、受入研究者である犬塚修一郎教授と共同し、磁気乱流に付随する電場が塵粒子の帯電状態および円盤の電気伝導度に及ぼす影響を解析的に調べた。その結果、現実的なパラメータの範囲内で電場による円盤ガスの絶縁破壊が起こり、塵粒子の帯電量および円盤の電気伝導度が劇的に上昇する可能性を発見した(Okuzumi&Inutsuka,論文執筆中)。この結果は惑星形成環境に対する従来の理論的理解の大幅な変更を迫るものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の3つの目的のうちの2つである「塵粒子と磁気乱流の共進化過程の解明」と「塵粒子の存在下における円盤電気伝導度の電場依存性の解明」は予定通り達成された。さらに、「円盤を貫く磁束量が惑星形成・円盤進化過程の鍵を握る」という新しい視点を得て、当初の計画からさらに1歩踏み出した研究に着手しはじめている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究によって、原始惑星系円盤を貫く磁束の量が円盤進化や微惑星形成に決定的な影響を与えることが示唆された。しかし、原始惑星系円盤における磁束分布の進化を取り扱う理論はこれまでのところ存在していない。平成24年度は、円盤磁束量の現実的な値の決定に向けて、受入研究者の犬塚修一郎教授、名古屋大学の鈴木建准教授、東京工業大学の竹内拓特任准教授と共同して円盤磁束の円盤内での移動の理論モデル化に取り組むことを計画している。
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Research Products
(10 results)