2011 Fiscal Year Annual Research Report
網膜色素上皮形成メカニズムに関わる転写因子Pax6の多面的機能の解析
Project/Area Number |
10J07029
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西原 大輔 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 眼発生 / 網膜色素上皮 / Paired-box 6 / Mitf |
Research Abstract |
本研究は、脊椎動物の眼の組織のひとつである網膜色素上皮(RPE)の形成メカニズムの解析を目的としている。特に本研究では、転写因子の一つPaired-box 6 (Pax6)の機能解析を行っている。Pax6は眼発生において中心的な役割を果たす因子だが、その遺伝子変異体の眼は重篤な形態形成異常を呈するため、Pax6のin vivoにおける機能解析を困難にしている。とりわけ、RPEの形成に関してはPax6の機能が関与していることがいくつかの研究から示されているものの、具体的な作用機序に関しては分かっていない。 これまで我々は、RPE形成過程においてPax6がMitf(RPE形成において不可欠な転写因子)の発現と機能の2つを制御する可能性を明らかにしてきた。現在、この2つの働きをPax6という1つの因子がどのようにして同時にコントロールするのか、またその働きがRPEの正常な形成にどのように貢献しているのか、という問題に焦点を当てて解析している。解析の結果、Pax6が複数の機能を同時に果たすメカニズムが、Pax6タンパク質の構造や他の遺伝子との相互作用に起因していることが分かってきた。 また、Pax6のin vivoにおける詳細な機能解析から、Pax6はMitfを介さずにRPE形成に関与する可能性も見出している。具体的には、RPEの細胞形態やある種の遺伝子発現にPax6が関わっていることを新たに明らかにした。このような報告はこれまでなく、今後、in vivoとin vitroの両面での解析から、Pax6の機能やその下流因子に関する新たな知見が得られる可能性が高い。 本研究成果によって、未だ不明な点の多いRPE発生の分子メカニズムやPax6の作用機序について新たな知見を提供できると考えているが、それだけでなく近年研究が加速している眼やRPEの再生医療分野に本研究の知見を応用することが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にあった、各種の変異型Pax6遺伝子の作製は概ね完了しており、それを用いた遺伝子導入実験も適宜進行している。また、これまでの結果をまとめて論文として発表する予定で、そのためのデータ等も集まってきており、投稿に近い段階まで来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策に関しては、当初の研究計画からの大きな変更点はない。Pax6の多面的機能が、RPEの形成過程で担う分子メカニズムに関して、in vivoとin vitroの両面から解析を進めていく予定である。ただ、これまでの研究結果で、Pax6に関してのこれまで予想していなかった機能や、他の因子との関連性が認められてきている。これらのテーマも追加の形で進めることで、本研究の大きなテーマであるPax6の「多面的機能」をより正確に把握できるものと考えられるため、今後研究目標の一つとして組み込んでいく予定である。
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Research Products
(2 results)