2010 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯樹木を対象とした遺伝解析による群集構造の歴史性の解析
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10J07035
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
片渕 正紀 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 群集構造 / 機能形質 / 熱帯雨林 / ヌルモデル |
Research Abstract |
植物の群集構造や共存機構を決定するメカニズムの解明は、生態学の中心的課題のひとつであり、保護区の設計や群集の保全を科学的に行うためにも欠くことのできない情報である。本研究は植物の分布パターンへの土壌環境要因の影響を植物の形質を用いて定量化することを目的とし、マレーシア・サラワク州ランビルヒルズ国立公園に設置された52haプロットに生育する熱帯樹木のフタバガキ科全80種の葉の物理的・化学的性質を集め解析を行った。その結果、以下のことがわかった。1)種の出現頻度を固定した上でランダムに種が出現すると仮定した帰無モデルに比べて実際の群集では単位重量あたりの葉面積(SLA)、葉の物理的強度といった成長に関わる植物の形質が収斂する傾向があった。この結果は、局所群集では環境要因により植物の性質が制限されるという環境フィルタリングの考え方と一致し、前述の中立説に反するものである。2)同一の生育土壌環境に限定した上でランダムに種が出現すると仮定した帰無モデルでは制限しなかった帰無モデル比べ、最小では個葉面積の収斂度が26%、最大では相対成長速度の収斂度が77%減少し、その他の性質では40-60%減少した。この結果は、環境フィルタリングの効果の大部分を土壌環境要因が担っていることを示唆すると同時に、土壌環境要因では説明しきれないその他の微環境要因も植物の群集構造を決定する上で重要であることを示唆している。以上の結果は昨年度のアメリカ生態学会で発表済みであり、原著論文は現在改訂中である。
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Research Products
(2 results)