2010 Fiscal Year Annual Research Report
鉄鋼のベイナイト変態に及ぼす微量添加元素の影響の解明
Project/Area Number |
10J07062
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高山 直樹 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 鉄鋼材料 / マルテンサイト / ベイナイト / 方位関係 / 結晶学 |
Research Abstract |
鉄鋼材料では,高強度・高靱性の鋼板を作成するためにベイナイト組織が注目を浴びている.ベイナイト鋼の強度や靱性を決定するのは,ブロック・パケットなどの結晶粒径や,セメンタイト・MAなどの第2層組織である.本年度の研究実施状況としては,ブロック・パケットなどを形成するバリアントの中でも特に隣接しやすいバリアントを定量的に示すことに成功した.ベイナイト組織やマルテンサイト組織は,オーステナイトとKurdjumov-Sachs(K-S)の方位関係を持つことが知られているが,実際の合金では方位関係は理想的なK-S関係からずれることや合金によって方位関係が変化すること,また残留オーステナイトが室温で残留しにくい合金では実際に方位関係を調べることが非常に難しいことから,この手法によって隣接しやすいバリアントを調べることは非常に困難であった. そこで,室温でオーステナイトが残留しない試料において,変態完了後の組織の結晶方位を測定することによって,母相オーステナイトとの方位関係を求める手法を開発した.そうして得られた実際の方位関係を使用して,各バリアント間の関係を計算した.また,方位差が非常に近いバリアント間を区別するため,方位差だけでなく回転軸も考慮に入れることにした.その結果,マルテンサイトでは同一の晶癖面を共有するバリアントの中でも方位差の小さなバリアントが,低温で生成するベイナイトでは双晶関係のバリアントが,高温で生成するベイナイトでは同一のベイン対応を共有するバリアントの中でも特に方位差が小さなバリアントが隣接しやすいことが明らかになった.また,マルテンサイトと中間温度で生成するベイナイトの結晶学的特徴はほぼ同じものであると考えられていたが,この手法によって実際には中間温度で生成するベイナイトは,低温で生成するベイナイトと高温で生成するベイナイトの中間的な特徴を示し,マルテンサイトとは異なる事が明らかになった.
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