2010 Fiscal Year Annual Research Report
神経栄養因子様効果をもたらす脳内レチノイド受容体の新規シグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
10J07329
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
倉内 祐樹 熊本大学, 大学院・薬学教育部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 神経栄養因子 / レチノイド / シグナル伝達 / 一酸化窒素合成酵素 / ドパミンニューロン / パーキンソン病 |
Research Abstract |
1.レチノイド受容体リガンドによるNO/cGMPシグナルおよびMEK/ERKシグナルの誘導とBDNF発現増大機序の解析 レチノイド受容体サブタイプのうちRARαおよびRARβに対する強いアゴニスト活性を有するAm80は、処置時間および処置濃度依存的に中脳組織におけるBDNF mRNAおよびタンパク質の発現レベルを増大させ、その効果は一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害薬であるL-NAME、可溶性グアニル酸シクラーゼ阻害薬であるODQ、プロテインキナーゼG阻害薬であるKT5823、MEK阻害薬であるPD98059の適用により抑制された。またAm80は神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)の発現量増大およびERKリン酸化を誘導した。ODQおよびKT5823の適用がAm80によるERKリン酸化誘導を抑制した一方、PD98059はAm80によるnNOS発現増大を抑制しなかった。以上の結果より、Am80はNO/cGMPシグナル経路を駆動し、その下流でMEK/ERKシグナルを活性化することでBDNFの発現を誘導することが示唆された。 2.レチノイド受容体リガンドによる8-nitro-cGMP産生増大機序の解析と8-nitro-cGMPにより修飾される標的タンパク質の同定 レチノイド受容体リガンドがNO/cGMPシグナル経路を駆動するという知見に基づき検討した結果、Am80の適用がドパミンニューロンにおいて新規シグナル伝達分子である8-nitro-cGMPの産生を増大し、L-NAMEおよびODQがこの効果を抑制した。さらにプロテオーム解析により、Am80処置後の中脳組織において8-nitro-cGMPによるS-グアニル化修飾を受ける候補タンパク質を複数見出した。これらの結果から、レチノイド受容体刺激が、中脳領域において新規のシグナル伝達系を誘導することが示唆された。
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