2011 Fiscal Year Annual Research Report
神経栄養因子様効果をもたらす脳内レチノイド受容体の新規シグナル伝達機構の解明
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10J07329
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
倉内 祐樹 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 神経栄養因子 / レチノイド / シグナル伝達 / 一酸化窒素合成酵素 / ドパミンニューロン / パーキンソン病 / チューブリン |
Research Abstract |
前年度までに、レチノイド受容体作動薬であるAm80が一酸化窒素(NO)/cGMPシグナル経路を駆動してドパミンニューロン保護効果をもたらすことを見出した。本年度は、Am80 の神経保護効果に、新規NOシグナル関連分子である8-nitro-cGMPの産生を介したシグナル経路の動員が関与する可能性について、タンパク質のS-グアニル化修飾に着目して検討した。ヒト神経芽細胞腫であるSH-SY5Y細胞、胎仔ラット脳より調製した中脳ニューロンの初代培養系および、新生仔ラット脳より調製した中脳-線条体組織切片共培養系を用いて検討した結果、Am80はドパミンニューロンにおいて8-nitro-cGMPの産生を増大し、タンパク質のS-グアニル化レベルを亢進させ、その効果はNO/cGMPシグナル阻害薬との併用あるいは、神経型NO合成酵素(nNOS)のノックダウンによって顕著に抑制された。さらに質量分析の結果、S-グアニル化を受ける標的分子として、細胞骨格である微小管を構成するタンパク質であるβ3-tubulinを同定した。そこで微小管の動態に着目して検討した結果、Am80は微小管の重合レベルを亢進し、その効果はNO/cGMPシグナル阻害薬との併用あるいは、nNOSのノックダウンによって抑制された。加えて、Am80あるいは8-nitro-cGMPが、ドパミン神経毒であるMPP+による傷害性からドパミンニューロンを保護することも見出した。以上の結果から、Am80は8-nitro-cGMPの産生を介したシグナル経路を動員し、β3-tubulinのS-グアニル化を介した微小管安定化作用によって、ドパミンニューロンを保護することが示唆された。
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Research Products
(5 results)