2011 Fiscal Year Annual Research Report
可搬型小型反電子ニュートリノ検出器を用いた原子炉稼働状況モニタリングの研究
Project/Area Number |
10J07331
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 康浩 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ニュートリノ / 原子炉モニタリング / 安全保障 / 反電子ニュートリノ |
Research Abstract |
本研究の目的は、ブラスチックシンチレータを用いた小型反電子ニュートリノ検出器を製作し、ニュートリノ検出技術の原子力安全保障上の応用という観点から、反電子ニュートリノを用いた原子炉モニタリング手法を確立することである。研究の最終段階においては、製作した検出器を用いて、原子炉由来ニュートリノのフラックスとスペクトルを測定する事で、原子炉モニタリングを実現する。 平成23年度は、以下のような研究実績が得られた。 浜岡原子力発電所における測定 平成23年3月~5月にかけて、中部電力・浜岡原子力発電所におけるバックグラウンド測定試験を行った。 浜岡原子力発電所3号器の炉心から約40mの位置に検出器を設置し、原子炉の非稼働から稼働への遷移の観測を目的として測定を開始した。しかし平成23年3月11日に発生した東日本大震災の影響で浜岡原子力発電所3号機が稼働せず、結果として2ヶ月間のバックグラウンド測定を行うこととなった。 2ヶ月間の測定により、検出器の無人運転が可能であること、バックグラウンドの変動が十分に小さいことが確認できた。 検出器の拡張 平成23年6月~10月にかけて検出器の拡張作業を行った。プラスチックシンチレータの本数を16本から36本に増やし、ニュートリノの想定される検出数及び、検出効率の改善を行うことができた。 大飯発電所における測定 平成23年11月~平成24年1月にかけて関西電力・大飯発電所におけるニュートリノ測定を行った。11月中旬から12月中旬にかけて原子炉が稼働した状況での測定を行い、12月中旬から平成24年1月にかけて原子炉が停止した状態での測定を行った。 測定されたデータを解析した結果、原子炉のOn/Offに対応して、ニュートリノと判別される信号の増減が確認された。屋外で遮蔽をせずにニュートリノを測定した事例は他にはなく、世界初の結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度末から平成23年度末にかけて2回の予備実験と1回の検出器拡張を行うことが出来たので、検出器の改良可能点の洗い出しは予定通り進行している。特に大飯発電所における原子炉のon/offに伴うニュートリノの有無の観測からニュートリノ測定の際に問題となる中性子バックグラウンドに関する知見が得られたので、今後の検出器改良の方針を判断するための情報が十分に集まった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は大飯発電所における測定の解析を継続し、ニュートリノの検出及び環境放射線・宇宙線μ粒子がニュートリノ測定に与える影響について詳細な分析を行う予定である。その結果を活用し、バックグラウンドの適切な遮蔽に関する検討・実験を行い検出器のさらなる拡張と改良を行う。 東日本大震災の影響が継続しており、原子力発電所の稼働に関する状況が不安定であるため、今後、状況を見つつ適切な測定内容・スケジュールについて判断していく予定である。
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