2010 Fiscal Year Annual Research Report
脳卒中における臓器間連関の変容の解明と新規治療戦略開発のための基盤研究
Project/Area Number |
10J07478
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
原田 慎一 神戸学院大学, 薬学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 脳虚血ストレス / 耐糖能異常 / オレキシンA / メトホルミン |
Research Abstract |
これまでに、脳虚血ストレス負荷が、全身性の血糖値制御機能の破綻を誘導し、それが先行してその後の神経障害を悪化させる可能性を考察してきた。すなわち、脳虚血ストレス負荷後の血糖値の変動が神経障害の発現・進行に影響を及ぼしていると示唆される。本研究では、一過性脳虚血モデルマウスを用いて、脳虚血ストレス負荷後の血糖値変化を制御することによる神経障害発現への影響について、各種血糖値制御因子、特に、糖代謝やエネルギー調節において重要な役割を担うserine/threonine kinaseである AMP-activated protein kinase (AMPK)、近年中枢末梢臓器間連関により、視床下部を介して末梢組織での糖代謝を制御することが報告されたorexin-Aに着目し、検討を行った。 本研究により、脳虚血ストレス負荷後早期に、肝臓におけるinsulin感受性の低下を介した糖新生の亢進が一過性の耐糖能異常を誘発し、それが神経障害の悪化に寄与することが明らかとなった。その発現機序に関しては、肝臓および骨格筋のAMPK活性の変化を伴わない一方で、metformin処置による肝臓のAMPK活性化が、虚血性耐糖能異常の改善と神経障害抑制に寄与することが明らかとなった。さらに、orexin-Aの脳室内投与によって、肝臓での脳虚血ストレス負荷後のinsulin受容体の減少に伴った糖新生の亢進を抑制することが明らかとなった。加えて、orexin-Aはそれに伴った虚血性耐糖能異常の発現を抑制し、神経障害発現の抑制に寄与した可能性が考えられる。 以上、本研究から、脳虚血ストレス負荷後における各種血糖値制御因子の活性調節は、神経障害抑制のために重要であることが示唆される。
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