2010 Fiscal Year Annual Research Report
歯車状両親媒性分子から構築されるディスクリートな水溶性超分子カプセルの機能創成
Project/Area Number |
10J07500
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 貴志 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 両親媒性分子 / 歯車状分子 / ホスト・ゲスト化学 / 疎水効果 / 超分子化学 |
Research Abstract |
疎水効果は方向性に乏しいため、決まった数の両親媒性分子から構築される真に単分散な集合体を作ることは一般的に難しい。本研究で用いる歯車状両親媒性分子は、水中で疎水効果によって互いに歯車が噛み合うように会合し、箱型の六量体カプセルを定量的に生成する興味深い特徴を有する。本研究課題では、この超分子カプセルの機能創成を目的としている。本年度は、カプセルのホスト分子としての知見を得るために、「新規なゲスト分子認識現象の解明」を重点テーマとして研究を行った。 初めに、種々のサイズ・形状を有する疎水性の炭化水素分子や多環芳香族分子をゲストとして検討した。その結果、サイズの小さいものとしてn-ブタンが3分子、サイズの大きいものとしてピレンが2分子など、疎水効果を駆動力として幅広いサイズのゲスト分子を包接できることが明らかとなった。 次に、種々の置換ベンゼンをゲストとして包接したときのカプセル骨格のHNMRシグナルの化学シフト変化に注目した。その結果、ゲストの体積と包接に伴うカプセル骨格のNMRシグナル変化量との間には正の相関が認められた。すなわち、六量体カプセルはゲストを包接することによってある程度外側に膨らむことができ、その内部空間の体積変化が歯車状分子同士の噛合いの度合の変化につながること、そしてその結果としてカプセル骨格のNMRシグナルの化学シフト値がカプセル内部空間の大きさのよい指標となることが示された。構造の一義性を保ちつつ内部空間の大きさをゲストに応じて変化させうる六量体カプセルの包接特性は、配位結合や水素結合と違い厳密な方向と距離を規定しない疎水効果により会合する歯車状両親媒性分子の特徴的な性質を生かした興味深いものである。
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Research Products
(6 results)