2011 Fiscal Year Annual Research Report
硫化カルボニルの四種硫黄同位体比に注目した、成層圏硫酸エアロゾル生成過程の解明
Project/Area Number |
10J07563
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
服部 祥平 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 硫化カルボニル / 成層圏硫酸エアロゾル / 硫黄同位体 / 波長依存同位体分別 |
Research Abstract |
昨年度に行った実験で、OCS同位体分子種の紫外線吸収断面積の測定より、OCS光解離反応の波長依存同位体分別係数を求めた。また、この結果と大気から成層圏に達する光の量より下部成層圏におけるOCS光解離によって生じる同位体分別係数が1‰程度と小さいことを明らかにした、この結果は、第一著者としてAtmosphoric Chemistry and Physics誌に発表した。 次に、夏にコペンハーゲン大学に1ヶ月在外研究を行い、大気光化学リアクターを用いた実験を行った。この研究では、成層圏におけるOCS分解において、光解離に次いで2番目に寄与を有する酸素ラジカル(O(^3P))とOCSの反応における同位体分別を求めた。この結果、同位体分別係数は-20‰程度であるとわかり、理論計算結果とも一致した。なおこの結果はThe Journal of Physical Chemistry Aに掲載された。 最後に、OCSの消滅反応として重要な最後の反応であるOHラジカルとOCSの反応に関しては共同研究者と理論計算を用いて同位体分別係数を見積もった。この反応は、反応経路が2種類あるため、その寄与が温度や圧力に応じて変化する。このため、実験でも求めにくい。理論計算と大気中の温度圧力変化から、OCS+OH反応の同位体分別の高度依存性を初めて見積もった。この結果は共同研究者の論文としてChemical Physics Letter誌に発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の目標である成層圏硫酸エアロゾル生成過程を同位体的に議論する上で重要な硫化カルボニルの大気中消滅反応である光解離、OHラジカルや酸素ラジカルとの反応における同位体分別の決定が終了したことは今年度の非常に良い進展と言える。一方で、測定法の開発に時間を割けず、大気試料の観測はまだ観測が始められていないため、さらなる努力が必要なため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度まではコペンハーゲン大学での実験が主たる研究成果と結びついていたが、今後は所属研究機関における測定法の開発や観測に重点を置く。
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