2011 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエを用いた左右対称性を破る新規な機構の解明
Project/Area Number |
10J07621
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中澤 直高 東京理科大学, 大学院・基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 左右非対称性 / ショウジョウバエ |
Research Abstract |
動物のからだには、遺伝的に決められた左右非対称性が認められることがしばしばあります。左右軸は、前後軸や背腹軸とともに、体軸の要素として胚発生の基礎となっています。したがって、左右非対称性の形成機構を明らかにすることは、個体発生や臓器形成を理解するための中心的な課題の1つです。そこで、本研究では、ショウジョウバエを用いて、臓器の左右対称性が破られ、左右非対称な形態に発生する過程を明らかにすることを目的としています。 左右対称性の破れに関わる遺伝子を網羅的に探索するために、生殖細胞系列において突然変異細胞をモザイクにもつ個体から、突然変異ホモ接合体胚を得る方法(生殖細胞モザイク法)を用いて、胚の消化管の左右非対称性の異常を指標とした遺伝的スクリーンを行いました。この結果、消化管の左右対称性の破れに関わると考えられる遺伝子の突然変異体を1系統単離することができました。現在、この突然変異体の責任遺伝子を同定するための遺伝子座マッピングを行っており、候補遺伝子を約55遺伝子まで絞り込むことが出来ています。 また、ショウジョウバエ胚において、任意の遺伝子を個体中の器官の中でモザイク状に発現させるシステムを新たに構築し、論文を発表しました(Nakazawa et al .,2012,Developmental Dynamics)。このシステムを、単離した突然変異体ホモ接合体胚内で用いることで、単離した遺伝子の細胞内における機能を調べることができると考えられます。このシステムを用いて、消化管の左右非対称性が鏡像化することが明らかとされているMyosin31DF遺伝子の突然変異ホモ接合体胚内で、Myosin31DF遺伝子をモザイク状に発現させました。この胚の消化管上皮細胞の頂端面におけるDE-cadherinタンパク質の局在を調べた結果、Myosin31DFが細胞自律的に働いていることを明らかにすることができました(Taniguchi et al.,2011,Science)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第2染色体について、およそ500系統の突然変異系統を作出し、消化管の異常に関して、遺伝的スクリーンを行いました。目標とする系統数にはまだ届いていませんが、新たに得られた突然変異系統、1系統の責任遺伝子に関して、およそ55遺伝子まで絞り込むことができており、「研究の目的」にある「ショウジョウバエの左右対称性の破れに機能する遺伝子の同定」は、採用年度内に達成できると考えています。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、第2染色体、第3染色体を含めて、母性効果を除去した、約2000系統の突然変異系統を作出し、消化管の左右性が異常になる突然変異系統を探索する予定でした。しかしながら、遺伝的スクリーンに遅れが生じてしまい、採用年度内に2000系統の突然変異系統の遺伝的スクリーンを完了することが難しくなってしまいました。そこで、今後は、第2染色体の遺伝的スクリーンで得られた突然変異系統の責任遺伝子の同定を第一優先にし、同定した責任遺伝子がショウジョウバエの左右対称性の破れにおいて、どのような機能を果たしているかどうかを採用年度内で明らかにできるようにします。
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[Journal Article] Canonical Wnt signaling in the visceral muscle is required for left-right asymmetric development of the Drosopbila midgut2012
Author(s)
Junpei Kuroda, Mitsutoshi Nakamura, Masashi Yoshida, Haruka Yamamoto, Takaaki Maeda, Kiichiro Taniguchi, Naotaka Nakazawa, Ryo Hatori, Akira Ishio, Ayumi Ozaki, Shunsuke Shimaoka, Tamiko Ito, Hironao Iida, Takashi Okumura, Reo Maeda, Kenji Matsuno
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Journal Title
Mechanisms of Development
Volume: 128
Pages: 625-639
DOI
Peer Reviewed
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