2011 Fiscal Year Annual Research Report
環境変遷に基づく放散虫の進化と多様性、古海洋環境指標としての新展望
Project/Area Number |
10J07648
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
石谷 佳之 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 放散虫 / Collodaria目 / Spumellaria目 / 古海洋環境 / 進化 / 多重遺伝子解析 / 伸張因子遺伝子 / 有孔虫 |
Research Abstract |
本研究対象である放散虫は大きく5つの目に分けられ,そのうちのCollodaria目の進化系統とSpumellaria目の進化系統を明らかにした.Collodaria目は過去の海洋温暖化の時期に派生しており,ドレイク海峡が開くことに伴う海洋循環の強まりと海洋溶存シリカ濃度の変化と密接に関わって分岐進化してきたことがわかった.また,Spumellaria目は過去の海洋温暖化や寒冷化の時期に分岐進化しており,海洋の深層に生息する群集は現在の海洋表層に多く生息する珪藻の多様性が上がる時期に分岐していることがわかった.本研究により,放散虫の進化と古海洋環境の変化が密接に関わっていることが示唆され,古海洋学的に重要な知見が得られた. 放散虫の進化を正確に理解するために,放散虫の初期進化を研究した.今まで報告のなかった放散虫の多重遺伝子解析を行うことにより,放散虫が有孔虫と姉妹関係にあることがわかった.また,放散虫と有孔虫の共通形質である素早い仮足(餌などを採取する際に用いるアメーバ上の細胞質)を司る遺伝子が共通派生していることがわかり,放散虫と有孔虫の共通祖先が,既にこのような形質を有していたことが示唆された.また,遺伝子の水平伝搬や部分損失が起こっていると考えられるペプチド伸張因子遺伝子を調べ,放散虫・有孔虫がGromiaと呼ばれる生物が共通派生したと思われる伸張因子遺伝子を持ち,非常に近しいことがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の研究目的である放散虫の系統関係の精査,放散虫の初期進化の解明ができ,論文発表もできたため.
|
Strategy for Future Research Activity |
申請書の研究目的の中で,未だ達成できていないものは放散虫の種内変異の評価である.現在,本研究を進めるための資料等は確保できており,また,実験も着手している.今年度の前期には実験結果も得られる予定なので,今年度中の論文発表を目指し,研究を進めていく予定である.
|
Research Products
(4 results)