2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J07689
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹内 勇一 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 左右性 / 右利き・左利き / 種内二型 / 捕食行動 / 神経基盤 / マウスナー細胞 / タンガニイカ湖 / シクリッド |
Research Abstract |
鱗食魚(Perissodus microlepis)の捕食行動の運動成分、時間経過、左右性を解明するため、生息地であるタンガニイカ湖から本種を輸入し、水槽内でこの鱗食魚の捕食行動を、キンギョを被食魚として高速度カメラ(500fps)で撮影し、運動解析を行った。 鱗食魚は通常、底沿いに忍び寄ってから被食魚に突進する。典型的な捕食行動は、(1)被食魚後方への接近、(2)側方への回り込み、(3)S字状の構え、(4)胴の屈曲を伴う噛みつき、(5)垂直方向への体躯の捻り、の5過程で構成されていた。過程(4)では、左か右への素早い体の屈曲運動が行われた。実験した個体の90%以上で鱗をはぐ被食魚の体側と屈曲方向が著しく偏っており、その方向が開口方向と合致する時に捕食成功率が極めて高かった。また、最大屈曲角度と最大角速度は利き側が逆側より有意に大きいことが明らかとなった。 この運動の脳内機構を探るため、過程(4)の屈曲運動に酷似し、後脳のマウスナー細胞で駆動される音刺激での逃避運動を同一個体で調べた。その結果、左利きも右利きも、逃避方向の最大屈曲角度と最大角速度に左右差は見られなかった。もし鱗食時の屈曲運動もマウスナー細胞で駆動されるなら、マウスナー細胞から下位の脊髄や胴筋に左右差はなく、マウスナー細胞より上位中枢に左右差があると考えられる。 以上より、鱗食魚は大きく屈曲できる利き側を認識して襲うことが示され、鱗食行動の左右性を生む責任部位が後脳以前の神経系にあることが示唆された。
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