2011 Fiscal Year Annual Research Report
自己組織化単分子を用いた有機フラッシュメモリの研究と応用
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10J07701
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横田 知之 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機トランジスタ / 有機メモリ / 自己組織化単分子膜 / フラッシュメモリ / 増幅回路 |
Research Abstract |
平成23年度は、フローティングゲート構造によるPseudoCMOSインバータの閾値電圧制御のばらつき低減と、増幅回路への応用を行った。さらに、新規N型有機半導体を用いた低電圧駆動する高性能の有機トランジスタの作製に成功した。 これまでの研究で、フローティングゲート構造を用いることでCMOSインバータの閾値電圧を制御することが分かっていた。これは、フローティングゲートに電荷を蓄えることで閾値電圧を変化させ、P型とN型のバランスを変えることによって実現している。有機半導体においては、N型半導体に大気安定性や電気的特性に関して、P型半導体に比べて問題がある。そこで、このフローティングゲート構造を、近年新しく提案された有機PseudoCMOSインバータに用いることで、P型のみでCMOSインバータと同等の特性を示し、さらにデバイス作製後に自由に閾値電圧を制御することに成功した。閾値電圧の値は、2V駆動の際、0~1.2Vの範囲を網羅することができた。有機トランジスタを回路応用する際の問題点として、大気不安定性やデバイスごとのばらつきがあげられる。そのため、デバイスを作製した後に閾値電圧を制御することは非常に重要だと考えられる。実際に、このフローティングゲート構造を用いることにより、作製後の閾値電圧のばらつきを400mVから20mVまで低減することに成功した。 これまでに述べたとおり、N型有機半導体は電気的特性や大気安定性に問題があった。今回我々は新たに開発された有機半導体を用いることで、移動度0.3cm^2/Vsと高移動度で2Vで駆動する有機トランジスタの作製に成功した。また、封止膜を作製することによりトランジスタの大気安定性を向上させ、100日以上でほとんど特性の変化が起こらないことを確認した。 これらの研究成果は2011年米国のIEDMで発表を行い、国内外の多くの研究者の関心を集め、現在IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES、Applied Physics Lettersにそれぞれ投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、フローティングゲート構造を回路に応用することで、デバイスのばらつきを低減させることに成功した。その結果、ばらつき制御機構のある増幅回路マトリックスシートの作製に成功した。この結果は、2011年の12月にアメリカのワシントンDCで行われた国際学会のIEDMにおいて国内外の多くの研究者の関心を得ることができた。 また、有機トランジスタの問題点であるN型材料に関しても研究を進め、低電圧駆動するSAM絶縁膜でも従来より1桁程度の移動度を有する有機トランジスタの作製に成功した。この結果は、将来のCMOS回路、アプリケーション応用において非常に重要な結果だと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、これまでに得た技術を用いてさらなるアプリケーション応用を目指す。特に、有機トランジスタが有するフレキシブルな特徴を生かすために医療用応用を目指す。 医療用のデバイスを作製するうえで、高感度・高精度なデバイスは非常に重要である。これまでは、回路側のデバイスばらつきを制御する技術を開発してきたが、最終年度はセンサ部分の研究を進める共に、フローティングゲート構造のばらつきを自己制御するような回路設計を目指す。
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Research Products
(12 results)