2011 Fiscal Year Annual Research Report
魚類下垂体ホルモンのソマトラクチンの分泌と合成に及ぼす視床下部ホルモンの影響
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10J07732
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
東 森生 富山大学, 理工学教育部, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ソマトラクチン / レーザーマイクロダイセクション法 / キンギョ / 免疫染色 / 体色調節 / 下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド |
Research Abstract |
平成23年度では、「魚類下垂体ホルモンのソマトラクチン(SL)の分泌と合成に及ぼす視床下部ホルモンの影響」という研究課題のもと、キンギョのSL-αと-βに特異的な抗血清を作成し、実験に用いた。これまでにキンギョSL-αおよび-βを明確に識別可能な抗血清は存在せず、下垂体における各SL産生細胞の局在は不明であった。作製した抗血清の特異性をドットブロット法により評価した後、キンギョ下垂体におけるSL-αおよび-βの各免疫陽性反応の分布を調べた。SL-αおよび-βの各免疫陽性細胞は下垂体中葉に観察され、成長ホルモンやプロラクチン免疫陽性細胞とは明確に区別できた。しかしながら、SL-αと-βの各免疫陽性細胞の分布は一部で類似する様子が観察された。そこで、レーザーマイクロダイセクション法を用いて、SL-αと-βの各免疫陽性細胞を回収し、シングルセルPCRを行った。その結果、SL-αmRNAのみ、SL-βmRNAのみ、両mRNAを発現する3種の細胞を見出し、キンギョ下垂体において、3種のSL産生細胞が存在することが初めて明らかとなった。ここまでの結果を論文としてまとめ投稿し、受理された。本研究により得られた抗体はキンギョにおけるソマトラクチンの機能解析などの今後の研究の進展に必要不可欠な画期的な分子ツールとしての利用が期待される。 キンギョにおけるSL-αおよび-βの機能を明らかにすることを目的として、白背景色および黒背景色の水槽で飼育した個体間における各SLのmRNA発現変化を解析した。その結果、SL-αmRNAは黒背景飼育個体において高く、SL-βmRNAは白背景飼育個体において高く発現していた。白背景で飼育したキンギョの体色は明化し、黒背景で飼育したキンギョの体色は暗化することから、SL-αおよび-βがキンギョの体色調節に関与する可能性が考えられた。平成22年度において、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)がSL-αおよび-βの各遺伝子発現を制御することを見出しているが、間脳領域におけるPACAPの遺伝子発現も背景色の変化に応答することが見出された。今後はSL-αおよび-βの機能解析とその制御機構を総合的に解析し、キンギョにおけるSLの役割を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究により、これまで作成されていなかったキンギョ由来のSL-αと-βに対する特異抗体の作成に成功した。ホルモン産生細胞の局在の精査やレーザーマイクロダイセクション法による解析結果からもその分子ツールとして有用性が確認された。キンギョにおけるSL-αおよび-βの機能解析にも着手し、キンギョにおけるSLの解析が大きく進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
キンギョを白や黒背景の水槽で飼育すると背地反応を示し、体色が明化または暗化する。この際、下垂体におけるSL-αおよび-βの遺伝子発現が高まると共に、間脳領域におけるPACAP発現も変化する。これらの結果は、生体内におけるSL-αおよび-βの機能と、これまで生体外で明らかにしてきた制御機構とを関連付けるものである。そこで、今後は、キンギョ下垂体初代培養細胞を用いた生体外でのSL-αおよび-βの制御機構の解析に加え、生体内における制御機構の役割について言及する。具体的には、生体外においてSL制御因子として見出された因子の発現や、下垂体における細胞内情報伝達経路の活性化度合いについてリン酸化蛋白を指標として解析する。
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Research Products
(6 results)