2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J07800
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山田 武見 新潟大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | シリコン原子空孔 / 弾性ソフト化 / スピン軌道相互作用 / 動的平均場 / 周期アンダーソンモデル / メタ磁性 / 近藤半導体 |
Research Abstract |
シリコン単結晶に対して行われている極低温超音波実験において、1億個に1個ともいわれる極微量な原子空孔に起因する弾性定数の異常なソフト化が報告されている。特に最も基本的な系であるとされるボロンドープシリコンにおいては、ソフト化の異常な磁場依存性が報告され、超音波実験の解析から負の結合定数を持つスピン軌道相互作用が重要視されている。本研究ではこの問題に対し、無限系に1個の空孔状態を記述できるグリーン関数法を用いてその電子状態の記述、及び観測されている弾性定数のソフト化との関係を詳細に調べた。特にこれまでのタイトバインディングモデルとグリーン関数法に基づく方法に、空孔波動関数の拡がりに起因するスピン軌道相互作用の非局所的な効果を考慮することで、負のスピン軌道相互作用が実現し得ることを初めて明らかにした。この結果は異方的に拡がった空孔波動関数に対するスピン軌道相互作用の効果を精度よく考慮することが、原子空孔の低温基底状態を決定する上で本質的に重要であることを示唆するものである。 また上記の研究と並行して、重い電子系において精力的に研究されているメタ磁性や近藤半導体の研究にも従事した。強相関電子系に対して有効な理論として知られる動的平均場理論を、実際の物質構造・結晶場の効果を考慮した周期アンダーソンモデルに適用し、電子状態の温度依存性、磁場依存性、相互作用依存性を統一的に調べた。得られた物理量には電子状態の繰り込みなどの強相関効果に加え、物質構造・結晶場の効果も良く反映されており、実際の実験で得られているメタ磁性や近藤半導体の振る舞いを精度良く記述している。特に状態密度や磁化率の温度依存性において、重い電子系の重要問題である遍歴局在クロスオーバーの振る舞いが見られており、今後は多軌道効果やバンド構造の詳細を考慮することで、本手法はより現実的な重い電子状態の記述を可能にするものとして期待される。
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