2011 Fiscal Year Annual Research Report
1細胞からの大規模発現解析による雌性配偶体の発生・機能を司る遺伝子の同定と解析
Project/Area Number |
10J07811
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
須崎 大地 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 植物 / 雌性配偶体 / 次世代シーケンサー / 遺伝子発現解析 / 顕微細胞操作 / 細胞間相互作用 |
Research Abstract |
有性生殖をおこなう生物にとって、受精は種を維持するための重要な現象であり、その達成のためには配偶体が正しく形成され機能する必要がある。本研究では、被子植物の雌性配偶体に着目し、これを構成する各種細胞を調べることで、それぞれの機能を司る遺伝子の同定と解析を目指した。今年度は、昨年度に取得したシロイヌナズナの雌性配偶体を構成する野生型の助細胞と卵細胞、さらに花粉管誘引に異常を示すmyb98変異体の助細胞を用いた大規模発現解析のデータ解析をおこなった。各種細胞間の比較をおこない、これまでの報告されている知見通り、野生型の助細胞では分泌性の低分子量タンパク質やその分泌に関わる遺伝子群が高発現することが明らかとなった。変異体の助細胞の遺伝子発現様式は、野生型の助細胞よりも、むしろ野生型の卵細胞に近いことが示唆された。この結果は、元来雌性配偶体を構成する全ての細胞は配偶子になるための能力を有しているが、実際には卵細胞と中央細胞の2つの配偶子細胞が側方にある助細胞と反足細胞の配偶子化を抑えるように制御している(Kagi and Gross-Hardt,2007)という説を支持するものだと考えられる。 また、昨年度までにトレニアの未成熟胚珠を用いて開発したin vitro培養系とUVレーザーによる細胞操作を駆使することで、助細胞が花粉管誘引能を獲得する際に各種細胞間の相互作用が必要であることが示唆されていた。本年度は、新しく導入された電動ステージを搭載した顕微鏡システムを用いて、未成熟な雌性配偶体が成熟するまでの様子や、UVレーザー処理後の雌性配偶体の発生の様子のタイムラプス観察をおこなった。未だ予備的なデータであるが、未熟な卵細胞を除去した後の観察により、残された2つの助細胞の一方の形態が卵細胞様に発達する事例が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
被子植物の雌性配偶体を構成する各細胞に特異的な遺伝子群や、固有の機能を獲得するために必要な未知の細胞間相互作用が徐々に明らかになってきたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得たシロイヌナズナの遺伝子発現解析データは、ゲノムへのマッピングにより明確な遺伝子構造がみえにくい箇所があり、より大規模な配列取得の必要性が示唆された。これにより、さらに各細胞の特徴を司る遺伝子発現様式に迫ることができると期待される。 トレニアを用いた解析では、後は、昨年度に同定した各細胞特異的な遺伝子の発現を指標にして、UVレーザーの処理の有無も含めて、培地上で発生した各細胞の分化がどのようになっているのかを解析する。
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Research Products
(8 results)