2011 Fiscal Year Annual Research Report
金属触媒によるヘテロ不飽和結合の高度活性化に基づく触媒的変換反応の開発
Project/Area Number |
10J07852
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
村井 征史 東京工業大学, 資源化学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ポルフィリン / 酸化還元 / ヘテロ不飽和結合 / 協奏機能 |
Research Abstract |
近年、複数の金属錯体の適切な組み合わせにより、各々の金属の機能の足し合わせに留まらない相乗効果が発現することが報告されている。このような背景の中、本申請者は酸化還元活性な有機金属錯体と、カルベン移動反応や酸化反応を始め、種々の触媒活性を有するメタロポルフィリンに着目した。これらのユニットをπ共役で連結することで得られる多核錯体は、各ユニット間の電子的な相互作用が可能になるため、ヘテロ不飽和結合の活性化において上記の協奏機能効果を期待することができる。 本年度は、昨年に合成法を確立した「酸化還元活性な鉄及びルテニウムフラグメントM(η^5-C_5Me_5)(dppe)」をエチニル基を介して「亜鉛ポルフィリン」と連結した多核錯体の物性制御を試みた。その結果、鉄及びルテニウムフラグメントの酸化-還元反応を利用し、ポルフィリン環の電子密度の制御に成功した。具体例を、以下に二点示した。 ・金属フラグメントの酸化-還元に伴う光誘起電子移動(Photo-induced Electron Transfer)により、ポルフィリン環の発光のON/OFFが可逆的にスイッチ可能であることを明らかにした。 ・金属フラグメントからのπ逆供与により電子密度が向上したポルフィリン環が、ナフタレンジイミドやテトラシアノキノジメタン等の電子不足アクセプターと、スタッキングを介した自己組織体を形成することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に見出したスタッキングによる自己組織化を利用すれば、ヘテロ不飽和結合を有する基質の触媒反応中心であるポルフィリン環への接近・固定が可能になることが予想され、新規高度活性化を目指す上で極めて有用な知見を得ることができたと考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
酸化還元活性な金属フラグメントとメタロポルフィリンとを連結した多核錯体を用い、ヘテロ不飽和結合を有する基質の活性化を検討する。並行して、DFT法による理論計算を行い、ヘテロ不飽和結合-金属錯体の電子状態や活性化における機構を検証する。また、当該年度期間中、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校に留学して得たデバイス評価に関する知識を活かし、得られた錯体の有機光起電力デバイスや単分子ワイヤーとしての性能評価にも挑戦したい。
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