2011 Fiscal Year Annual Research Report
ねじれアレキサンダー不変量の特殊値と被覆空間のトポロジーについて
Project/Area Number |
10J07961
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山口 祥司 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 位相幾何 / 結び目理論 / 線形表現 / ねじれアレキサンダー不変量 / 被覆空間 |
Research Abstract |
平成23年度は,結び目の外部空間へ被覆写像をもつ被覆空間とその位相不変量について考察を行い,被覆空間のねじれアレキサンダー不変量の因数分解公式を導出することができた. 被覆空間とは別の空間へ折り重なるような写像をもつ空間のことであり,本研究では特に結び目の外部空間という三次元の空間へ被覆写像を持つ被覆空間に対して考察を行った.今回得られた公式は,結び目の外部空間へ被覆写像をもつ被覆空間のねじれアレキサンダー不変量は因数分解が可能であり,因数分解の中の各因子は結び目の外部空間のねじれアレキサンダー不変量を修正することで与えられるという結果である.この因数分解の公式は,被覆空間の概形が結び目の外部空間へ折り重なるような形状であるという幾何学的な特徴をよく反映している.被覆空間は折り重なる様子を表す被覆変換という群作用をもち,平成23年度はまず,結び目の外部空間へ被覆写像をもつ被覆空間の中でも被覆変換が巡回的な場合に公式を定式化および証明した.その後,改良を重ねることで複数成分の境界をもつ三次元多様体に被覆写像をもつ被覆空間や被覆変換が巡回群を複雑に組み合わせた場合にも適用できる公式へ発展させることができた. 平成23年度の成果に関する先行研究としては,古典的なアレキサンダー多項式の因数分解公式,ねじれアレキサンダー不変量についても限定的な場合での因数分解に関する研究が挙げられる.平成23年度の成果は,既存の先行研究を特別な場合として含む,より広範囲に適用できる汎用的な公式である.今後の計画では,分岐被覆空間のトポロジーをねじれアレキサンダー不変量を通じて考察を行う.ねじれアレキサンダー不変量の因数分解公式を導出する中で得た研究成果により,分岐点集合の外部空間の性質ついては,研究課題遂行に十分な理解に到達できたといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請課題における研究計画の目的は,ねじれアレキサンダー不変量を通じて分岐被覆空間のトポロジーを考察することである.分岐被覆空間は,被覆空間と分岐点集合の二つの部分に分割できる.平成23年度の研究により,被覆空間とねじれアレキサンダー不変量の関係については,本申請課題を遂行するに十分な水準にまで解明できた.このことから,現在の達成度は順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の考察対称は,分岐被覆空間とよばれる三次元空間である.この空間は,被覆空間と呼ばれる部分と分岐点集合と呼ばれる部分に分けることができる.前者の被覆空間については,平成23年度の考察により本研究課題遂行に必要な解明が行えたので,今後は分岐点集合を中心に考察を進める.取り組むべき課題は,分岐点集合が分岐被覆空間のねじれアレキサンダー不変量に与える影響を調べることである.課題解決のため手法としては,空間全体の位相不変量を各分割部分の不変量の組み合わせで表すホモロジー代数が有効である.特に分岐点集合と被覆空間を貼り合わせる部分の影響を詳しく考察する必要がある.
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