2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外電場を介した非シナプス的相互作用による神経回路網の情報処理機構の解明
Project/Area Number |
10J08010
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
毛内 拡 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 脳波(EEG) / 細胞外(電場)電位 / 膜電位・細胞外電位 / 電気生理学 / 誘電率・誘電体特性 / ケーブル方程式 / 神経細胞(樹状突起) / ラット脳スライス |
Research Abstract |
研究の目的 細胞外電場を介した非シナプス的相互作用による神経回路網の情報処理機構を理論的・実験的側面から解明する. 具体的内容・意義・重要性 ・理論的側面(モデルを用いたコンピューターシミュレーション及び数式を用いた解析) 脳組織の誘電率を知ることは神経細胞が局所電場電位(LFP)や脳波(EEG)に対してどのような振る舞いをするのかの理解するために重要である.従来,電流源密度(CSD)解析の分野では,低周波領域における脳組織の誘電率は無視出来るほど小さいと考えられていた.しかしながら近年,実験によって脳組織は無視できないほど非常に大きな誘電率を持ちうることが示唆された.低周波領域において脳組織が非常に大きな誘電率を持つ原因として,神経細胞が電気的に長い構造(軸索・樹状突起)を持つことが考えられる. 本研究では,神経突起を有限長の受動的ケーブルで,細胞外空間を単なる抵抗とみなしてモデル化を行い,ケーブル方程式を導いた.以前の研究で開発した手法を応用し,グリーン関数法を用いてケーブル方程式を解き,細胞外刺激に対する細胞外電位応答の一般解を導出した.細胞外電位応答から組織全体の誘電率を計算したところ,低周波領域で非常に大きな値を取りうることが示され,この結果は実験結果を支持する結果となった. ・実験的側面(ラット脳スライスを用いた電気生理学的測定・検証) 生体の脳内では脳の活動状態や行動に応じて,様々な周波数の交流の細胞外電場,すなわち脳波(EEG)が観測されている.研究代表者は以前,神経細胞の細胞体および樹状突起の膜電位の振幅が,細胞外電場の周波数に依存して変化することを理論的に予測した.今年度は,この理論的予測を電気生理実験によって検証するために樹状突起からのホールセルパッチクランプ技術を修得した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の成果を多くの国内・国外の学会・研究会で発表し,有意義なディスカッションを行った. また本研究の成果は,現在Biophysical Journalに投稿中である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,神経細胞の細胞体および樹状突起の膜電位の振幅が,細胞外電場の周波数に依存して変化することを樹状突起からのホールセルパッチクランプを用いた電気生理学的実験によって証明することが優先課題である. また,神経科路網の細胞外電場を介した非シナプス的相互作用を解明する上で,グリア細胞の活動に注目する.グリア細胞は神経細胞と異なり,電気的活動を行わないので,カルシウムシグナルを活動の指標として計測する手法の修得が必要である.近年は生きている動物から直接応答を計測する技術(in vivo)が確立されつつあるので,in vivoでのカルシウムイメージング技術を習得する.
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Research Products
(6 results)