2010 Fiscal Year Annual Research Report
ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)の沿岸生態系における生物濃縮機構
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10J08101
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
水川 薫子 東京農工大学, 大学院・連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | PBDEs / PCBs / bioaccumulation / 脱臭素化 / 底性魚 / 肝ミクロソーム / bioavailability |
Research Abstract |
本研究では、PBDEs生物濃縮をより詳細に調べるためにin vitro代謝実験とin vivo取り込み実験を行った。 In vitro実験では、マコガレイの肝ミクロソームを用いた分解実験を実施した。その結果、対象とした6種類のPBDEsのうち3種で脱臭素化が認められた、その分解の程度も同属異性体によって異なった。このことより、PBDEsの脱臭素化は同属異性体特異的であることが明らかになった。一方、PBDEsと類似した構造を持つポリ塩化ビフェニル(PCBs)については水酸化・脱塩素化のどちらについても認められなかった。脱臭素化の認められなかったPBDEs同属異性体は、沿岸海洋生態系内において食物連鎖を通して濃度増幅する同属異性体と一致していた。また、BDE209から脱臭素化が起こった位置はpara位>meta位>ortho位の頻度であった。以上により、BDE209の生体内での代謝では、生体内に蓄積しやすい脱ortho位PBDEsが生成されにくいことが示唆された。 In vivo実験では、マコガレイへの餌と堆積物からの曝露実験を行った。その結果、6種のPBDEs、20種のPCBsともに、濃度の曝露期間での増加・排泄期間での減衰が確認された。ただし、餌中にBDE209を含む堆積物曝露区において、BDE209の濃度増加は認められなかった。PBDEs・PCBsの排泄速度定数を算出したところ、PBDEsは同属異性体によって排泄速度定数が大きく異なったものの、PCBsは疎水性と排泄速度定数の間に負の相関が見られ、異なる傾向を示した。吸収効率は、PCBs堆積物<PBDEs堆積物<PBDEs生物<PCBs生物、の順に高くなった。ただし、環境中・生物中の濃度を考慮すると、実際の吸収量は異なってくることが推定された。 以上のことから、PBDEsの生物濃縮は餌由来が主であるが、BDE209の取り込み・生体内での脱臭素化は起こりにくいと考えられた。
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