Research Abstract |
この宇宙は何から出来ており,どのような法則に支配されているのか。この問いに対し,人類は「標準模型」を構築した。しかし,標準模型の肝となる「ヒッグス粒子」はいまだ見つかっていない。また,標準模型では重力を書き表すことが出来ないし,宇宙にある「暗黒物質」も理解できない。 「超対称性理論(SUSY)」は,より根源的な理論として最も有力な候補である。この枠組みによれば,暗黒物質は説明できるし,標準模型の持っている異常な性質「階層性問題」も解決される。 現在CERNにおいて行われているLHC実験は,ヒッグス粒子や超対称性理論の証拠を発見することを目的としている。昨年LHC実験により,ヒッグス粒子の存在を示唆する結果が発表された。ところが,それらのデータは,ヒッグス粒子の重さは超対称性理論が想定するよりもチョット重そうだ,ということを示唆していた。 超対称性理論の想定よりも「チョット重い」というのは,超対称性理論の妥当性に関わる重要な問題である。超対称性理論の自然な枠組みの中でヒッグス粒子を「チョット重く」することは出来るのか。仮に出来たとして,その枠組みが正しいことをどうやって証明すればよいか。私の研究テーマは超対称性理論の検証であるので,この問題を重要視して研究活動を行った。 本年度,私は他の研究者とともに,ヒッグス粒子を「チョット重く」する手法を,2種類構築し,それらについての解析・検討を行った。さらに,その一方について,その枠組みが正しいことを証明するための手法を提唱した。特に重要な点として,その証明は比較的早いうちに(おそらく2年以内に)可能であるということを挙げておく。容易に検証できる自然で有効な枠組みを構築した,と自負している。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒッグス粒子の質量が想定よりもやや大きくなりそうだという事実から,超対称性粒子の質量が想定したよりも全体的に大きい可能性が高まってきた。そうするとR-parityの破れがある場合のシグナルも検出しにくくなることが想定される。そのため,今後は(1)超対称性粒子が重い場合にもシグナルが検出出来るような実験手法はあるか。(2)超対称性粒子のうち一部の質量を大きくしつつ残りを軽い領域に残すことが出来るか,出来るならばその場合どうやって超対称性理論を検証するか。という2つの方向で件風を進めていく。
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