2011 Fiscal Year Annual Research Report
連続量クラスター状態を利用した量子状態操作の実現に関する研究
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10J08136
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鵜飼 竜志 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子計算 |
Research Abstract |
量子計算は入力された状態に対してユニタリー変換を施すことで量子状態を変化させ、最終的に得られた状態から計算結果を割り出すという方法をとっている。つまり全ての量子計算(ユニバーサルな量子計算)を行うためには、全ての状態操作を実現する必要があるということになる。今回は測定により演算を制御するというクラスターモデルにおいて量子状態操作の実証実験を行った。 平成22年度には、クラスターモデルにおける制御ゲートという演算の実証実験を行った。これは任意の多モードガウシアン操作を実現するために必要な構成要素であったが、行われる演算のうち2モードの成分は測定基底によって選択することはできないものであった。言い換えれば、ユニバーサル性は保証できるものの、演算が固定されているため最適な構成要素ではなかったということである。そこで平成23年度には、エンタングルの度合いを測定基底によって制御できる構成を用いて、クラスターモデルの量子状態操作の実証実験を行った。 クラスターモデルの量子計算のリソースとしては3者間のエンタングルした状態であるクラスター状態を利用した。量子計算の入力としては、コヒーレント状態及び真空状態を利用した。2モードの入力状態とクラスター状態とをエンタングルさせた後、ホモダイン測定及びフィードフォーワードを行うことでエンタングルさせる度合いを制御できるエンタングル操作が完了する。エンタングルの度合いは1つのホモダイン測定における光の位相を変えることによって実現される。 コヒーレント状態を入力として利用することにより、演算の入出力関係が正しいことが確認でき、また真空状態を入力として利用することにより、測定基底の変更に応じて出力状態のエンタングルの度合いが変わることが確認できた。以上より、エンタングルの度合いを測定基底によって制御できるエンタングル操作の実証に成功したといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究により、エンタングルの度合いを測定基底によって制御できる構成を用いて、クラスターモデルの量子状態操作の実証実験に成功したから。
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Strategy for Future Research Activity |
クラスターモデルの量子計算では、クラスター状態と呼ばれる多モードのエンタングルした状態が計算の資源として利用されるが、これまでの実験ではクラスター状態の1つのモードに対して、1本のスクイーズド光が利用されていた。この構成では、量子計算に必要なモードが増加するにつれて、必要なスクイーズド光の本数も増加することになる。今後の研究では、2本のスクイーズド光を時間ごとに区切り、異なる時間のスクイーズド光は異なるモードであるとみなすことによって、モード数の増加に対して必要なスクイーズド光の数が増加しないような構成を用いることを考え、その理論的研究及びその実証に向けた実験を行う。
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