2011 Fiscal Year Annual Research Report
間接型半導体における電子正孔系量子凝縮相実現へむけた相制御の研究
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10J08168
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 剛 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 電子正孔系 / テラヘルツ / 半導体 / シリコン / 励起子 / 励起子BEC / 電子正孔BCS状態 |
Research Abstract |
半導体中の電子正孔系における量子凝縮相(励起子BEC、電子正孔BCS状態)実現を目的として、シリコンを試料として選定し、外場による電子状態の制御の研究を行っている。より具体的には、圧力によるバンド構造の制御、磁場によるスピン縮重の解消を行っている。上記の量子凝縮相は、気体原子系では実証され現在も盛んに研究がなされているが、固体中ではいまだに実現されておらず、実現される温度が冷凍機で実現可能なほど高温であることから、応用が期待できる発見である。 平成23年度は、研究計画に基づいて磁場・圧力下の実験を行ってきた。磁場によるスピン状態の制御に関しては、磁場下での光励起後の発光観測とテラヘルツによる分光を行った。その結果、励起子の微細構造が磁場により分裂していく様子が観測され、磁場により励起子縮重度が低減できることを確認した。また、磁場により分裂する最低エネルギー状態が光学禁制の暗励起子であることが分かり、長寿命の励起子を高密度に生成できることを示唆する知見が得られた。得られた長寿命励起子の可能性を確かめるべく、長時間遅延のポンププローブ光学系を立ち上げ、実際に磁場下での励起子寿命の測定を行った。圧力によるバンド構造の制御に関しては、圧力セルの制作を終え、実際にテラヘルツ分光により、ダイナミクスを観測することに成功した。その結果、電子正孔液滴の密度が低下する様子を観測し、さらに液滴が不安定化するという知見を得ることに成功した。以上述べた磁場・圧力下での技術を組み合わせ、磁場・圧力下におけるテラヘルツ分光の光学系を立ち上げ、実際に実験を行った。その結果、圧力下において電子正孔液滴が不安定化し、相対的に励起子密度が上昇したうえで、磁場による効果で1S励起子の縮重度が減少する様子を実験的に観測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初掲げた研究課題に対しては、計画通りに研究が進行しているのに加えて、研究の途中で新たに現れた問題に対しても研究を行い、実際に成果を上げることに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
技術的な問題は、昨年度まででほぼ全て解決したため、本年度は系統的な測定と詳細な解析を行い、得られた実験結果に対して物理的な解釈を与える。そして、電子正孔系における量子凝縮相の実現可能性について詳述する。 また、励起子モット転移の研究で得られた知見を基に、さらに系統的な測定を行い、長年の問題である励起子モット転移を進展させる。
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Research Products
(7 results)