2011 Fiscal Year Annual Research Report
匂い・気流・温熱感をVR上で再現するマルチモーダル感覚情報の記録再生システム
Project/Area Number |
10J08255
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
松倉 悠 東京農工大学, 大学院・工学府, 特別研究員(DC1)
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Keywords | バーチャルリアリティ / 五感情報通信 / 数値流体シミュレーション / 嗅覚ディスプレイ / 風覚ディスプレイ |
Research Abstract |
昨年度に、レーザスキャナとサーモグラフィを用いて実際の室内を撮影し、部屋の幾何学的データと温度分布データを測定した。本年度は、昨年度に取得したデータから数値計算用の格子を作成することに成功した。作成にはオープンソースのソフトウェアに実装されている機能を組み合わせて用いた。オープンソースのソフトウェアを用いることで、自作ソフトウェアに格子作成の手順を組み込み、自動化することが可能である。作成した数値計算用の格子に境界条件や計算条件を設定すると、数値流体シミュレーションを実行することができる。シミュレーションの実行結果と実際に測定した風速のデータを比較すれば、記録システムの評価が可能となる。また、レーザスキャナとサーモグラフィをロボットアームに搭載して、記録装置の製作も行った。ロボットアームにより、レーザスキャナとサーモグラフィを上下左右に向けることができ、数点における撮影で部屋全体の幾何学的データや温度分布データを取得することができる。 感覚情報の記録システムの研究開発と並行して、再現システムの研究開発も行った。昨年度に、向かい合わせに置いた二つのファンを用いて、二つのファンを結ぶ線分上の任意の一点から風や匂いが出ているように感じさせる装置を開発した。本年度は、昨年度開発した装置にさらにファンを二つ追加して、風や匂いの出所を二次元的に移動できるように改良した。この装置を液晶モニタと組み合わせて使用すると、モニタに映し出した映像の中の、ある一箇所から匂いや気流の出てくるように感じさせることができる。また、さらにファンを四つ追加して、風の生成方法を工夫することで、モニタ上に作り出す匂い分布の大きさを変更することにも成功した。以上の改良により、再現することができる状況が昨年度に比べて多彩になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感覚情報の記録システムに関して、部屋形状の計測においてデータに一部でも欠損があると格子を形成できないなど、様々な問題があり当初計画よりも進展が遅れている。しかし、移動ロボットによる環境認識に関して豊富な経験を持つスウェーデンの大学の研究室を訪問し、連携して研究を進めることにより、遅れを取り戻しつつある。感覚情報の再生システムについては、昨年度に開発した装置を改良して新たに特許の出願を行い、また、国際会議IEEE Virtual Reality 2012においてBest Poster Awardを受賞するなど、当初の計画以上の研究の進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
記録装置で取得した幾何学的データや温度分布データから質の高い数値計算格子を作成することを可能にし、感覚情報の記録システムの完成を目指す。作成した温度境界条件付き計算格子を用いてシミュレーションを行い、その結果を実際に測定した風速などと比較して評価する。風と匂いに加えて温熱感を再現するために、ファンと同程度の大きさのペルチェ素子の実装を試みたが、思ったほどの効果が見られなかった。そこで、放熱板などを追加して、効果的な加熱・冷却方法を検討する。また、加湿器や赤外線ランプなども追加し、夏のじめじめとした風や熱源から放出される輻射熱の再現も試みる。最終的に、開発した記録・再生システムを用いて、ガス漏れが生じている箇所を探し出すバーチャル訓練システムを作成し、デモンストレーションを行う。
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Research Products
(7 results)