2011 Fiscal Year Annual Research Report
多軌道d-p及びc-f模型による遷移金属及び希土類化合物の異常物性と超伝導の理論
Project/Area Number |
10J08290
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
柳 有起 新潟大学, 自然科学系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 軌道揺らぎ / S_<++>派超伝導 / 強相関効果 |
Research Abstract |
近年発見された鉄系超伝導体の超伝導機構を解明することが本研究の目的である。前年度は、鉄系超伝導体の電子状態を適切に記述できると考えられる、鉄のd軌道と砒素の軌道を顕に考慮した、2次元16バンドd-p模型に乱雑位相近似(RPA)を適用することにより、電子状態、及び超伝導について調べた。ここで、相互作用としては鉄サイト内のクーロン相互作用とA_<1g>、B_<1g>、E_g、orthorombicフォノンによる電子-格子相互作用を考慮した。そうすることにより、実験と定性的に一致する結果を得た。しかし、RPAでは、強相関・強結合効果を取り入れることができない。そこで、本年度は、強相関・強結合効果を取り入れるために、自己無撞着揺らぎ理論(SCF理論)、動的平均場理論(DMFT)といった、RPAを超えた近似を適用した。その結果、現実的なクーロン相互作用、電子-格子相互作用のパラメータ領域において、軌道揺らぎが発達し、また、その揺らぎを媒介として、ギャップ関数に符号反転のない戯超伝導(S++波超伝導)が実現することを示した。これは、RPAによって得られていた結果の正当性を保証するものである。 鉄系超伝導体の電子構造は非常に複雑であるため、現実的な模型に基づき、さらに、強相関・強結合効果も取り入れた研究を行う必要がある。これまで、現実的な模型に対して、強相関・強結合効果を取り入れ、超伝導まで議論した研究は少なかったが、本研究において、その試みがある程度成功したと言え、鉄系超伝導体の理解を進めることができた。また、軌道揺らぎが超伝導の発現機構であることを主張している研究は、非常に少なく、世界に先駆けた研究であると言える。実際、最近の超音波実験等では軌道揺らぎ理論を支持する結果が得られており、軌道揺らぎが超伝導の発現機構である期待が高まっている。
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Research Products
(19 results)