2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J08434
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
東城 友都 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 巻物状カーボンナノチューブ / グラファイト層間化合物 / ポリマー化剥離法 / イソプロピルアルコール / 孤立化 / エッジ状態 |
Research Abstract |
平成22年度の研究では、理論・実験の両面から電子局在の生じる炭素六角網面端を内包した巻物状カーボンナノチューブ(巻物状CNT)の合成および構造解析を行なった。その構造から磁性の発現や特異な電子輸送の発現を促進し、一次元炭素物質の応用の飛躍的発展を推進することを本研究の目的としている。 本年度の研究では、細断した円筒状CNTの熱処理および炭素網面層間にアルカリ金属が挿入したグラファイト層間化合物のポリマー化剥離から巻物状構造の合成条件を探求した。理論的にはポリマー化剥離法を利用した方が巻物状構造を多く合成でき、実験的にもポリマー化によるグラファイト層間の剥離により巻物状構造が多数観察された。この際、巻物状構造の合成量は溶媒種に依存することが判明した。またポリマー剥離したサンプルに対し、剥離効果の高いイソプロピルアルコール(IPA)を滴下することでSiO_2基板上への孤立化に成功した。この際、IPAの水分含有量により、サンプル残留量を制御できることが示唆された。ラマン分光分析により単一の巻物状構造の積層数を同定すると数層程度となり、電子顕微鏡像と比較して巻き数を同定すると2巻き程度のものが多く合成されることが判明した。この知見より巻物状CNTをモデル化し、バンド構造および状態密度などの電子的特性を計算したところ、ナノ炭素網面構造(グラフェンナノリボン)と同様の電子局在化現象(エッジ状態)の出現が予測された。 以上より、本年度の研究は新たな炭素構造の創出に寄与できたことで既存の電子デバイス代替材料としての利用やスピントロニクスへの応用展開が示唆された。
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