2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J08434
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
東城 友都 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 巻物状カーボンナノチューブ / グラファイト層間化合物 / 高温熱処理 / 露出エッジ |
Research Abstract |
平成23年度の研究では、昨年度の研究課題であった巻物状カーボンナノチューブ(巻物状CNT)の低収率に着目し、その大量合成手法の確立を目指した。またこの手法により合成された構造の形成過程を明らかにするために、実験および理論計算から構造解析を行なった。ここで得られた構造体により、新規現象の発現の促進および一次元炭素構造の応用分野拡大の推進を本研究の目的としている。 本年度の研究では、昨年度の研究においてグラファイト層の剥離に有効であったイソプロピルアルコールを用い、この溶液中でカリウム-グラファイト層間化合物を酸化バブリングすることにより、大量の一次元構造を得ることに成功した。この際、大量のカリウム塩化物や酸化物などの不純物を内包しながら巻物状構造になることが実験および理論計算の両面から示唆された。これらの不純物は電子デバイス応用時に電気抵抗率を高めるように作用するため、酸処理および還元処理を施すことによりそのような不純物を取り除くことができ、炭素のみの巻物状CNTを得ることができた。この構造の電子顕微鏡像観察および光学分析を行なった結果、エッジの露出した巻物状CNTが残存していることが示唆された。この構造は高温熱処理時にも安定であり、温度上昇に伴い積層が明瞭に現れる程、結晶性を高めることができた。また露出エッジの存在により、単一およびバルクの抵抗率は同径程度の同軸状CNTよりも低い値となることが確認された。 以上より、本年度の研究ではバルク量の新規炭素材料構造の創出に寄与できたため、今後、バルク量を必要とする電気貯蔵デバイスなどの応用展開が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、グラファイト構造に急激な歪みを入れることで巻物状カーボンナノチューブ(巻物状CNT)の大量合成を達成することができた。透過型電子顕微鏡像から積層数の同定を行ない、ラマン分光分析により露出エッジに起因するD'バンドの出現も観測した。電子デバイスの応用として、電流-電圧特性を測定し、同径の同軸状CNTよりも高い電気伝導率が得られた。さらに理論計算を用いて、構造最適化した単一の巻物状CNTの電気伝導性を計算したところ、同軸状CNTとは異なる電子輸送となることが示唆された。以上より、本研究は当初の申請書に記載した通り進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で合成した巻物状CNTは直径が10nm以上であり、ナノ量子効果を出現させるためには10nm以下にする必要がある。本年度の研究で、高温熱処理を行なうことで直径や積層数が変化するという知見を得たため、熱処理温度別による構造評価を行なうことで当該研究課題を解決し、新規現象の発現を目指す。また更なる電気伝導性の向上を目的として、窒素やホウ素などの異種元素ドープを行ない、その構造の劇的な電気的特性変化を目指す。ここで得られた知見を基に未ドープの巻物状CNTと同様に電子デバイスへの応用を推進する。さらに電気貯蔵デバイスなどに適用し、その特性評価から材料の有用性を検討する。
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Research Products
(1 results)