2011 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙背景放射温度揺らぎの非ガウス性から迫る揺らぎの起源の探究
Project/Area Number |
10J08477
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須山 輝明 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 宇宙初期揺らぎ / 非ガウス性 / σN形式 / 宇宙ひも |
Research Abstract |
H.23年度も原始曲率揺らぎの非ガウス性、より一般的には高次非線型の効果を取り入れた曲率揺らぎの理論的研究を行ないました。現在までのところ数多くのインフレーション模型及び初期揺らぎの生成メカニズムが提唱されており、どれが本当に正しいのかを観測から検証することが初期宇宙論の重要なテーマとなっています。その方法として、非ガウス性、即ち揺らぎの高次相関関数が、これまでにない新しい切り口として急速に注目を集めています。そこで、H.23年度には、まず基礎研究として、局所型と呼ばれるタイプの非ガウス性を持つ曲率揺らぎに対して、高次相関関数が一般的にどのような形になるかを明らかにしました。特に各次数で必要となる非線型パラメータの個数を明らかにし、それらの間に成り立つ局所型不等式を導きました。また、曲率揺らぎが宇宙初期にごく一瞬の間増大すると、3点相関と4点相関の非線型パラメータ間に特徴的な関係式が成り立つことを示し、非ガウス性が曲率揺らぎの時間進化を制限するのにも有効であることを示しました。これまでに、非線型長波長曲率揺らぎを扱う有効な手法として、δN形式と共変形式と呼ばれる一見すると非常に異なっている二つの手法が提唱されています。私は、二つの手法の間の関係を調べ、実際に両者は任意の摂動の次数で等価であることを示しました。これにより、どちらの手法を使っても、最終的な観測量例えば、fnlなど)は一致することが保証されました。宇宙ひもに関しては、相転移時に宇宙ひも生成に伴って誘起される時空の揺らぎの定量的評価を行ないました。これが温度揺らぎの非ガウス性としてどの程度寄与するかを評価することは今後の課題として残っています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
理論研究には、ある問題を解く計算過程で予想もしない発見をし、そこから別の研究が派生し、研究の幅と質が大きく向上することが頻繁にあります。今年も研究の目的に沿った研究だけでなく、この"副次的"な研究も成果を上げることができました。この理由により、区分(1)を選びました。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年にはPlanck衛星によるこれまでにない精度を誇る観測データが公表されます。これまでに引き続きこの初期宇宙論の研究分野において重要な貢献をしていくためには、これまでの理論計算を主体とした基礎研究から、観測データと初期宇宙モデルとの整合性や比較を念頭においた研究にシフトしていくという戦略をとることが鍵になっていくと考えています。
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