2012 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙背景放射温度揺らぎの非ガウス性から迫る揺らぎの起源の探究
Project/Area Number |
10J08477
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須山 輝明 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教
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Keywords | 宇宙背景放射温度揺らぎ / インフレーション |
Research Abstract |
宇宙背景放射の温度揺らぎに影響を与える可能性のある物理機構についての研究を行なった。具体的には、1)非一様な初期磁場のエネルギー密度がインフレーションによって生成されたとするシナリオのもとで、初期磁場に起因する曲率揺らぎを計算した。そして、それが観測されている値を超えてはならないという条件から、現在の磁場の大きさと再加熱温度の組み合わせに対する制限をいくつかの代表的なインフレーションモデルごとに課した。もし今後の観測及び宇宙物理の進展により、観測された磁場がインフレーション起源であることが確定すると、この論文の結果はインフレーション模型構築に強い制限を与える。2)超スローロールインフレーションモデルにおいて生成される曲率揺らぎを解析した。そして、このモデルでは、超ホライズン長さの揺らぎが増大することによって、二点相関関数のスケール依存性を特徴づけるパラメータと三点相関関数の大きさを特徴づけるパラメータの間に成り立つ標準的な関係式が破れることを示した。この結果は、非ガウス性の検出によって単一なスカラー場インフレーションモデルを排除できるとする一般的なコンセンサスに対する例外を提供したと位置づけられる。3)プランク衛星による非ガウス性の大きさに対する制限結果から、どれほど曲率揺らぎを生成するインフレーションモデルに制限が課せられるかを系統的に調べた。さらにプランク衛星の制限ではカバーされていない四点相関関数の大きさを見積もり、モデルのパラメータによっては四点相関関数が非常に大きくなり得る可能性を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期磁場や超スローロールインフレーションモデルなどの研究を通じて、宇宙背景放射の揺らぎの観測から、初期宇宙での揺らぎの生成機構のモデルに対して何が言えるかという問題に対し、新たな見地を得ることができたため、当初の目的をおおむね達成していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ブランク衛星によりこれまでで最も強い初期揺らぎの非ガウス性に対する制限が課され、いくつかの代表的な揺らぎの生成機構モデルが排除された。今後は、背景重力波や小スケールでの初期揺らぎの振幅から初期宇宙のモデル構築を試みる方向性が有効であると考えており、その方向で研究を進展させる。
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Research Products
(6 results)