2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J08500
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
有村 純暢 東京大学, 医科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | Dok-7 / 神経筋接合部(NMJ) / 筋無力症 / アデノ随伴ウイルスベクター |
Research Abstract |
筋無力症は運動神経を介した骨格筋収縮制御の異常を伴う疾患であり、自己免疫や遺伝子異常による神経筋接合部(NMJ:neuromuscularjunction)の形成・機能不全によって発症する。筋無力症に対する治療法はNMJにおける神経筋伝達の制御療法や重症筋無力症等に対する免疫抑制療法などであるが、共に根本的な治療法ではなく、新たな分子基盤による治療法の開発が求められている。現在、NMJの形成・機能不全によって発症する筋無力症において、NMJの形成シグナルを増強する治療法は確立されていない。この様な状況の下、受入者はDok-7と名付けたアダプター様分子がNMJ形成シグナルに必須の起点として機能していることを発見し、Dok-7の強制発現がNMJの形成を亢進することと、ヒトDOK7遺伝子の異常が先天性筋無力症の原因となることを解明した。そこで本研究においては、NMJ形成シグナルの増強による筋無力症の治療技術の開発を目的として、筋無力症のモデルマウスを用いてその効果と安全性を検証し、筋無力症の治療へ向けた新たな分子基盤を確立する。 当該年度において代表者は、NMJ形成シグナルを標的とする治療技術の開発を目的として、骨格筋に対する遺伝子治療に有望とされているアデノ随伴ウイルス(AAV:adeno-associated virus)ベクターの作製を武田伸一博士、岡田尚巳博士(国立精神・神経医療研究センター)との共同研究により推進し、Dok-7の発現をマウス骨格筋に誘導するAAVDok-7発現ベクターの投与による正常(野生型)マウスのNMJ形成の亢進に成功した。さらに、DOK7型筋無力症患者に高頻度に認められる変異をもつ筋無力症モデルマウス(ノックインマウス)の作出にも成功し、採用第2年目の研究実施計画通りに研究を推進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
採用第2年目において、AAVDok-7発現ベクターの投与による正常マウスのNMJの亢進を確認する一方で、DOK7型筋無力症患者に高頻度に認められる変異を有するノックインマウスも作出した。さらに、採用第3年目に計画していた当該マウスの筋無力症様病態の解析についても、2年目に実施を開始出来たため、(1)当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
採用第1及び2年目に実施した研究によって、Dok-7の強制発現による治療技術の開発と効果を検証するために必要不可欠な研究材料であるDok-7発現ベクター及びDOK7型筋無力症モデルマウスを得た。採用最終年度においては、Dok-7発現ベクターの投与によるDOK7型筋無力症モデルマウスのNMJ形成シグナルの増強を検証し、当該疾患に対するDok-7の強制発現の有用性を検討する。
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