2011 Fiscal Year Annual Research Report
GeVガンマ線・X線観測による銀河系内の宇宙線加速と伝播の研究
Project/Area Number |
10J08529
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
奥村 曉 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ガンマ線 / 宇宙線 / 星間物質 / 分子雲 / 光線追跡 |
Research Abstract |
本年度は主に三つの研究を行った。一つ目は、フェルミガンマ線宇宙望遠鏡を用いたオリオン分子雲からのガンマ線放射の研究である。前年度までに行ったガンマ線データの解析を継続して行い、系統誤差の評価を中心に解析結果をまとめ直した。100パーセク程度の範囲内で一酸化炭素分子の輝線強度とガンマ線の放射強度の比が数十%変化することを示し、電波観測だけでは見えていなかったオリオン分子雲内の星間ガスの分布をガンマ線観測から明らかにした。 二つ目は、Cherenkov Telescope Array(CTA)計画に関連する焦点面カメラの装置開発である。共同研究者らと開発した専用の集積回路とデータ取得用の回路の動作試験を、長期出張先のSLAC国立加速器研究所にて行った。データ処理用のソフトウェアの開発、回路の較正、回路の基本特性の測定などを中心に担当し論文にまとめた。この仮定でいくつかの問題点が現在明らかになったため、改良を施した回路をH25年度に製作して引き続き性能評価を行う予定である。 三つ目は、光線追跡ソフトウェアを用いたCTA計画のための光学系設計と、モンテカルロシミュレーションの実装である。前年度に作成した光線追跡ソフトウェアに機能を追加し、これを使ってSchwarzschild-Couder望遠鏡のシミュレーションプログラムを作成した。これをCTA計画用のモンテカルロシミュレーションに組み込み、共同研究者とガンマ線検出感度のシミュレーションを行った。また、焦点面検出器の全面に設置する集光器のシミュレーションと設計を行い、従来使われてきた集光器デザインよりも優れた収集効率のものを製作可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オリオン分子雲からのガンマ線放射を調べることで、我々の銀河内の星間物質と宇宙線に関するより詳細な情報を引き出すことができた。超新星残骸での宇宙線加速や周辺の分子雲との相互作用などを理解する上で、重要な結果が得られたと考えている。また将来計画に向けた装置開発を進めたことで、宇宙線加速と伝搬に関する将来研究にも寄与できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
フェルミ望遠鏡を用いたガンマ線データの解析を他の天体についても進める予定である。また、新たに製作予定の電子回路の測定を引き続き進める。
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