2010 Fiscal Year Annual Research Report
多重極限環境下NMR法を用いた強相関電子系の新奇な量子相と量子相転移の研究
Project/Area Number |
10J08690
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山内 一宏 東京大学, 物性研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 量子スピン系 / 高圧物性 / 5d遷移金属酸化物 / 核磁気共鳴 |
Research Abstract |
本研究では、低温、高磁場、高圧などの極限環境下で出現する新奇量子相の研究を進めることが課題である。二次元直交ダイマースピン系SrCu_2(BO_3)_2の基底状態は、常圧、零磁場の下では非磁性シングレットダイマー状態であるが、高磁場下における磁化プラトー相、2.4GPaの高圧下における新奇磁気相が見出されており、本研究の課題を実験的に追求する上で、理想的な物質である。本年度、我々はこのSrCu_2(BO_3)_2の2.4GPaの高圧下において見出された新奇磁気相をより詳細に理解するため、1.3および3.3Tの磁場の下で^<11>B核のNMR測定を行った。その結果、この磁気相はギャップの大きさが異なる2種類のダイマーが超周期構造を作る新奇なvalence-bond-solid状態と考えられることが明らかになった。 また、5d遷移金属酸化物は、3d遷移金属酸化物に比べ、d電子間のクーロン斥力の影響が小さいことから金属となることが期待される。しかし、一部のパイロクロア構造を持つIr酸化物では、絶縁体となるものが見出されており、電子相関とスピン軌道相互作用によるフェルミ面のトポロジーの変化との協調現象が絶縁化の起源として期待されている。このような新奇物質群に対する研究を進めることは、新奇量子相の探索においても望ましい。パイロクロア構造を有する5d遷移金属酸化物Cd_2Os_2O_7は、226Kで金属絶縁体転移を示し、絶縁化とともに磁気秩序転移を示すが、その磁気構造は明らかではなかった。本年度我々は、単結晶試料を用いた^<17>O核のNMR測定を行い、この物質の磁気構造が4-in 4-out構造であることを明らかにした。
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