2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規金属置換ポリオキソメタレートによる環境調和型触媒反応系の開発
Project/Area Number |
10J08715
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 智久 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 触媒反応 / ポリオキソメタレート / 金属二核活性点 |
Research Abstract |
本研究では「新規金属置換ポリオキソメタレートによる環境調和型触媒反応系の開発」をテーマとして研究を行っている。 γ-Keggin二欠損型ポリオキソメタレートのテトラアルキルアンモニウム塩に二当量の酢酸パラジウムを反応させることで新規パラジウム二置換ポリオキソメタレート、[γ-H_2SiW_<10>O_<36>Pd_2(OAc)_2]^<4->(I)、の合成に成功した。キャラクタリゼーションはIR、NMR、CSI-MS、元素分析、単結晶X線構造解析により行った。Iはγ-Keggin構造を有するパラジウム置換ポリオキソメタレートの初めての報告例となる。Iがニトリルの水和反応に高い触媒活性を示す事を見出した。様々な位置に置換基を有する芳香族ニトリルを基質として、90%以上の高い収率で対応するアミドを選択的に得ることができた。窒素、酸素、硫黄といったヘテロ原子を芳香環に有するニトリルの水和反応にも高い活性を示し、特に3-シアノピリジンを基質とした場合の触媒回転頻度は860h^<-1>となった。この値は既報のPd錯体を用いたニトリル水和反応の報告例と比較して10倍以上高い値であった。芳香族ニトリルのみならず脂肪族ニトリルにも適用可能であった。またIによるニトリルの水和反応における反応機構について検討した。芳香族ニトリルの水和反応における置換基効果・速度論・同位体効果を用いた検討により、Iによる水和反応が、(1)Iの有するアセテート配位子の脱離、(2)Pdに対するニトリルの配位、(3)水またはヒドロキシル基によるニトリルへの求核攻撃、の三段階によって進行すると推定した。活性化エントロピーの値・量子化学計算を用いた検討から、Pd二核活性点においてニトリルと水が活性化されることで、高い触媒活性が発現したと推定した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では「新規金属置換ポリオキソメタレートによる環境調和型触媒反応系の開発」をテーマとして、(i)金属二核活性点を有するポリオキソメタレートの合成、(ii)種々の触媒反応系への適用、(iii)触媒活性と活性点構造の相関解明、の三点を基軸として研究計画を行っている。現在までにパラジウム置換ポリオキソメタレートの合成・ニトリル水和反応系の開発・反応機構の解明を行い、上記三点の基軸に沿って計画通り研究は遂行されているため、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究において新たに合成したパラジウム置換ポリオキソメタレートの反応性を検討し、パラジウムを架橋する配位子の交換を行う。適切な架橋配位子を選択することで新規な構造を有する有機・無機複合体の合成を行う。パラジウムとは異なる金属の導入を検討し、ニオブ、白金、イリジウムなどの金属を置換した新規金属二置換ポリオキソメタレートの合成を行う。合成したポリオキソメタレートを用いて、種々の有機化合物の触媒的変換反応を行う。具体的には過酸化水素や分子状酸素を酸化剤としたアルケン・芳香族化合物・アルコール・アミン・スルフィドなどの酸化反応や、還元反応、酸・塩基反応、炭素-炭素結合生成反応、種々のカップリング反応について検討する。
|
Research Products
(2 results)