Research Abstract |
昨年度までの研究成果により,陸上植物のエンドサイトーシス小胞形成における細胞膜切断には,DRP1およびDRP2という分子構造の異なる二種類のダイナミン様タンパク質が関与することが明らかになった.そこで今年度はさらに,これらのダイナミン様タンパク質が形成する細胞膜切断装置の微細構造とその作動メカニズムを明らかにするため,従来の蛍光タンパク質の使用や試料のライブイメージングが可能な超解像顕微鏡法である構造化照明を全反射照明顕微鏡に組み合わせた光学系を用い,細胞膜上におけるシロイヌナズナDRP1,DRP2の詳細な局在やその挙動を解析した.その結果,DRP1,DRP2は,細胞膜上で外径が60nm程のリング状の構造体に重合することが明らかになった.さらに,このリング状の構造体は,細胞外から見て主に時計回りの方向にDRP1,DRP2が重合することにより形成され,一度その形成が完了するとより小さな直径の構造体に縮合することが分かった.これらの結果は,クラスリン被覆ピットの根元において,DRPがリングもしくはらせん状の構造体に重合し,その直径が収縮することにより,細胞膜を切断するという従来のモデルを支持するものであった.また,興味深いことに,DRP1,DRP2の重合には方向性が存在したことから,エンドサイトーシス小胞形成に機能する細胞膜切断装置には,極性すなわち重合速度の異なる二つの端が存在する可能性が強く示唆された.これらの成果は,実際の生きた細胞内における細胞膜切断装置の微細構造や特性,そして作動メカニズムを初めて明らかにした研究であり,細胞生物学分野において,大変重要な価値を持つと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
構造化照明という先駆的なイメージング技術を用いることにより,ダイナミン様タンパク質が形成する細胞膜切断装置の微細構造や特性,そしてその作動メカニズムを世界に先駆けて解明した.これは,細胞生物学上極めてインパクトのある発見であり,当初の研究計画を超えた大きな進展と言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の重要な研究成果の一つに,ダイナミン様タンパク質からなる細胞膜切断装置には,極性,すなわち重合速度の異なる二つの端の存在を明らかにしたことが挙げられる.そこで今年度は,細胞膜切断装置におけるこの極性の維持や発生を司る分子ネットワークを解明するため,DRP1およびDRP2と相互作用する因子の生化学的な手法を用いた同定を試みる.また,細胞膜切断装置内におけるDRP1およびDRP2の立体配置を明らかにするため,DRP1およびDRP2の生細胞内における結合をより詳細に検証する.
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