2011 Fiscal Year Annual Research Report
イネのカドミウム輸送機構の分子レベルでの解明と制御
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10J08989
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浦口 晋平 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 植物 / カドミウム / 輸送体 |
Research Abstract |
1.成熟葉/節で発現するイネ輸送体遺伝子OsLCT1の解析 RNAiによるOsLCT1発現抑制イネのカドミウム輸送を解析した。カドミウムの導管輸送は対照株と同程度であったが,篩管輸送はRNAi株において有意に低下していた。ポット栽培により対照株とRNAi株を栽培したところ,OsLCT1の発現抑制による生長や玄米のミネラル成分の低下は認められなかったが,玄米のカドミウム濃度はRNAi株において最大で50%程度低下した。OsL(CT1の発現の細胞特異性をin situハイブリダイゼーション法によって解析したところ,最上位節部の肥大大維管束の外縁部および分散維管束部に強く発現することが示された。以上の結果より,OsLCT1は,イネのカドミウムの篩管輸送に関与し,とくに節部においてカドミウムの維管束間移行に機能することで,玄米のカドミウム濃度を制御していることが示唆された。 2.カドミウム耐性関連遺伝子の解析 昨年度までにカドミウム耐性系統から単離したカドミウム耐性に関わる3つのQTLについて,F3,F4植物を得て遺伝解析を行った。現在,得られた植物を用いて各QTLのカドミウム耐性への寄与について解析中である。また,カドミウム感受性変異株については,日本型イネ品種(日本晴,コシヒカリ)との掛け合わせによりF1種子を取得し,現在F2種子を取得中である。 3.カドミウムの篩管輸送に関わるイネ変異株の解析 OsLCT1がカドミウムの篩管輸送に関与することが示されたので,OsLCT1に着目した解析を行った。OsLCT1発現抑制株およびT-DNA挿入株を用いて,昨年度に確立したイネ穂首からの篩管液採取・カドミウム定量系を改善し,現在表現型の解析を行っている。また,OsLCT1の突然変異株を複数のイネ突然変異体集団から単離し,ホモ株を取得した。一部の系統については戻し交雑を行い,F1種子を取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の第一の目標としていたカドミウムの篩管輸送に関わるイネ遺伝子の単離と応用について,OsLCT1の重要性を証明し,OsLCT1の発現抑制によって玄米のカドミウム含量を低下させることに成功した。また,「低カドミウム品種」の確立へむけて,OsLCT1遺伝子の突然変異株を取得しており,今後の応用研究への展開も期待される。カドミウム耐性関連遺伝子の単離と応用に関しては,耐性に関与する新規のQTLの単離と解析に主点をおいて進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
カドミウムの篩管輸送については,OsLCT1遺伝子の突然変異株を用いて温室および圃場での表現型を解析する。また,OsLCT1のRNAi株,T-DNA株の篩管液の解析等によって,イネのカドミウム輸送動態およびOsLCT1の役割について解析を進める。カドミウム耐性遺伝子に関しては,単離したQTLについての解析を進めるとともに,ファイトケラチンを介した耐性機構については研究計画に従ってドイツ・バイロイト大学のClemens教授の研究室において共同研究として実施予定である。
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Research Products
(8 results)