Research Abstract |
マイクロブログ等のウェブ社会を理解するため,当該年度には以下3点の基礎的な研究を行った.1)人間行動の実データ解析:人間社会における情報伝播を理解するため,人間間の会話イベントの実データ解析を行った.その結果,会話相手の決定性は,理論的に考えられていたよりも有意に大きいことが明らかになった.この緒果から,情報伝播のダイナミクスは,従来の想定よりも遅いことが示唆される.2)情報が不完全な場合の間接互恵性の解析:デマや流言,オークション詐欺など,ウェブ上での秩序維持の問題は重要な課題である.ウェブのような匿名社会での協力の問題は,間接互恵性の枠組みで理解される.間接互恵性では,集団における評判情報の共有が重要になる.本研究では,評判情報が不完全に共有されているモデルで協力が実現する条件を調べた.その結果,相手を見分けるが知らない相手は信頼して協力する戦略が,唯一安定かつ協力的であることを確かめた.この結果から,匿名社会では,知らない相手を信頼することが個人にとって利益であることが示唆される.3)個体学習モデルの解析:Bush-Mosteller学習は,個体の強化学習モデルの一つである,社会行動の進化ゲーム的な解析では,個体学習の効果についてはよく調べられていない.本研究では,Bush-Mosteller学習を行うエージェント同士のゲームの解析を,数値計算によって調べた,その結果,進化ゲーム的な解析から示唆されていた戦略(TFT,GTFT)と同程度以上に,Bush-Mosteller学習するエージェントも,少ない学習回数で協力的に振る舞えることが明らかになった.実際の社会では,個人は社会学習(人まね)だけでなく,個体学習(試行錯誤)を行っている.本研究は,そのような個体学習するエージェントの基礎モデルとなる.本研究の結果は学会誌に掲載された.
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