2011 Fiscal Year Annual Research Report
MOCVD法によるIII族窒化物半導体ナノ構造形成と単一光子発生器の実現
Project/Area Number |
10J09067
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
崔 〓鉉 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | GaN量子ドット / ナノワイヤ / 単一光子発生 / MOCVD選択成長 / 励起子分子 |
Research Abstract |
本研究では量子情報通信の基礎デバイスへの応用に向けて高温で安定な動作が可能な高効率単一光子発生器の実現を目指している。GaN量子ドットはその有力な材料であり、これまで温度200Kにおける単一光子発生が実証されている[S.Kako et al., Nat Mater.5,887(2006)]。さらに高い温度における単一光子発生のためには、小さい線幅をもつ発光ピークと励起子および励起子分子による発光の波長が十分に分離されていること(大きな束縛エネルギー)が必要である。本研究では、転位密度の低減効果があるナノワイヤ内GaN量子ドットに注目しており、これまでにGaNナノワイヤのMOCVD選択成長手法、位置制御したGaN量子ドットの成長に成功した。今回、新たにAlGaNを障壁層とする高品質ナノワイヤ量子ドットの選択成長とその光学評価を行い、選択成長したナノワイヤ内GaN量子ドットでははじめて励起子分子による発光と、半導体量子ドットとしては最大の励起子分束縛エネルギーを観測した。 <実験>GaN/AlGaNナノワイヤ内GaN量子ドットのMOCVD選択成長と光学評価 直径25nmの円形パターンを加工したSiO_2/AlN/c面サファイア基板上にMOCVD反応炉においてGaN/AlGaNナノワイヤを選択成長したあと、GaNを短時間堆積した後、再びAlGaNでカバーした。今回新たにAlGaNを障壁層とすることによってナノワイヤの表面モフォロージおよび光学特性が向上した。形成したGaN量子ドットに対して低温顕微PL測定を行いその光学特性を評価した。 <結果>GaN量子ドットから主に4.2~4.4eVにおいて鋭い発光ピークが観測されており、ドットの厚さは約1nmであると考えられる。発光ピークの線幅は従来自己形成量子ドットのそれと同等である。励起光強度依存性を調べることにより励起子分子による発光を観測でき、その束縛エネルギー(52meV)は、半導体量子ドットのなかで最大である。これは、強い閉じ込めによるクーロン相互作用の増大と内部電界による影響の低減に起因すると考えられる。 <意義および重要性>GaN量子ドットにおける最大励起子束縛エネルギーの観測は本研究を遂行するうえで非常に重要な結果である。高温でも励起子分子が安定に存在することができ、スペクトル上においても励起子による発光と十分に分離できるため、高温における光子相関測定に非常に有利である。また今回形成したGaN量子ドットにおける優れた光学特性は本研究で開発したナノワイヤ内量子ドット形成技術の有用性を示す重要な結果であると評価できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の記載の際、年次計画の2年目まではナノワイヤ内単一GaN量子ドットのMOCVD選択成長技術の最適化および高温における単一光子発生に必要な基礎光学特性を評価することを想定していた。量子ドットの選択成長においてはほぼ最適化が進んでいるところであり、光学特性においても今回最大励起子分子エネルギーの観測など優れた光学特性を有することが分かったので達成度としてはおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
高温における単一光子発生に有利な光学特性を見出すため、量子ドットの寸法とその光学特性についてしばらく調べてみる。この際、結晶成長へのフィードバックにより量子ドットの寸法の最適化を行う。また高温における量子ドットの光学特性、単一光子発生の可能性を調べる。
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