2010 Fiscal Year Annual Research Report
グリーン関数の零点が引き起こす非フェルミ液体の性質の解明
Project/Area Number |
10J09068
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 志朗 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / 擬ギャップ / フェルミアーク / 角度分解光電子分光 / 動的平均場理論 / 量子モンテカルロ法 / グリーン関数の零点 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体の超伝導機構解明の重要な手掛かりの一つとなりうるのは、超伝導臨界温度よりも高温でみられる異常な金属状態について理解することである。この領域において、様々な実験手法が、低エネルギー一粒子スペクトルの減少を示唆しており、それは擬ギャップと呼ばれている。特に、角度分解光電子分光法は、擬ギャップが強い波数依存性を持つことを明らかにした。 この擬ギャップ状態について、これまで様々な仮定に基づく現象論が提案されている。一方で、我々は、銅酸化物の最も単純な微視的模型の一つである2次元ハバード模型を、動的平均場理論をクラスターへ拡張した方法によって、特定の仮定を置かずに数都的に調べている。我々は、以前、モット絶縁体に少量の正孔を導入した領域を絶対零度で調べ、低エネルギーに一粒子グリーン関数Gの極と零点が共存するという結果を得た。本年度は、この領域で、有限温度の量子モンテカルロシミュレーションを行った。その結果、絶対零度で存在する極と零点が有限温度で互いに干渉することで、角度分解光電子分光法で見つかっている様々なスペクトル異常が再現されることが分かった。ここで注目すべきは、絶対零度での擬ギャップ構造が、従来の多くの理論とは根本的に異なるs波の構造をしていることである。つまり、s波擬ギャップ構造が多くの実験結果を再現したことは、擬ギャップの生成機構が従来の現象論とは異なるものであることを強く示唆している。我々は、この成果を下記論文にまとめた。 更に、量子モンテカルロ法のサンプル更新アルゴリズムの高速化により、より大きなクラスターサイズを低温まで調べられるようなプログラムコードの開発を行った。
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Research Products
(5 results)