2011 Fiscal Year Annual Research Report
新奇の電荷秩序相転移を示す分子性導体を用いた光誘起相転移現象の探索
Project/Area Number |
10J09103
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
深澤 直人 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 有機結晶 / 光誘起相転移 / 時間分解振動分光 |
Research Abstract |
電荷移動錯体β"-(BEDT-TTF)(TCNQ)は、1/4filledの系であり室温で電荷秩序絶縁体、低温で徐々に金属化をする新規な物質である。この物質に光照射を行うことによって、電荷の局在性の制御およびその検出手法の開発が研究の目的である。研究の過程で、電荷に敏感な分子振動に着目することで電荷のダイナミクスを詳細に捉えられるのではないかと考え、時間分解振動分光測定を行うことにした。 従来のポンプ・プローブの手法による時間分解振動分光を、典型的な光誘起相転移物質であるカチオンラジカル塩(EDO-TTF)_2PF_6に適用した。その結果、電子遷移吸収帯の変化からは知ることのできなかった、ピコ秒オーダーでの分子の電荷および構造の変化を捉えることに初めて成功し、J.Phys.Chem.Cに成果が掲載された。 この従来の方法では、高精度の測定が難しいため多チャンネルMCT検出器を用いた新しい光学系を開発し、結果的に世界最高水準の精度を有する時間分解振動分光用光学系の開発を達成した。この装置を用いて、β"-(BEDT-TTF)(TCNQ)の時間分解振動分光測定を行ったが、電荷の局在性が変化する様子は捉えられなかった。すでに光誘起相転移を起こすことが知られていたX[Pd(dmit)_2]_2(X=Cs,(C_2H_5)_2(CH_3)_2Sb)を対象に測定を行った結果、温度相転移の次数と関係した応答速度の違いを初めて発見した。ほかにも、金属錯体を対象に測定を行い、^<fac>-Re(CO)^3Clの光異性化ダイナミクスを明らかにしたり、[Ru(bmy)^2(bpm)]^<2+>の光励起による電荷分布の変化も初めて明らかにした。 本研究はβ"-(BEDT-TTF)(TCNQ)の光励起による新奇な変化を期待したが、光キャリアの注入による変化である可能性が高い。この研究の過程で開発した時間分解振動分光装置は、光誘起相転移物質や金属錯体の光励起ダイナミクスを検証するために非常に有用であることを実例をもって示したことが、本研究の最大の成果であると考えている。
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Research Products
(5 results)