2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J09104
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉崎 もと子 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 熱水実験 / 超苦鉄質岩 / コマチアイト / 熱水変質 / 蛇紋岩化反応 / 水素発生系 / 初期生態系 / 初期地球表層環境 |
Research Abstract |
近年、深海熱水孔において水素代謝を行う微生物生態系が発見され、その水素の供給源は超苦鉄質岩の蛇紋岩化(熱水変質)作用であると考えられている。初期地球の熱水系においても水素代謝を行う微生物生態系の存在が示唆されているため、現在の熱水系における蛇紋岩熱水系は、初期地球の熱水系のアナログとして注目されている。しかし、初期地球に特徴的に見られる岩石は、現在の火成活動では生成されないコマチアイトという超苦鉄質岩である。したがって、当時の熱水化学環境(温度、pH、水素ガス濃度、海水組成)や、水素代謝を行っていた生命の祖先(微生物生態系)を議論するためには、コマチアイトの蛇紋岩化(熱水変質)過程とそれにともない生成する熱水化学環境を理解する必要がある。蛇紋岩化は非平衡で進行する反応であるため、平衡論のみでは議論できない。そこで、蛇紋岩化の反応過程に関する情報が必要であり、実験途中の溶液試料採取およびその水素濃度分析・化学組成分析を行うことで、蛇紋岩化反応が平衡状態に近づく過程を知る。これは相平衡計算では議論できない情報であり、そのために実験が必要となる。 本研究では、先行研究により蛇紋岩化反応の温度依存性が示唆されるため、300℃と400℃で実験を行い、結果を比較した。また、地質記録から、コマチアイト溶岩流は厚み方向に組織が変化(ガラス、スピニフェックス(枝状組織)、キュムレート(かんらん石の沈積組織))することが知られているが、地質観察のみからではどの組織が生態系を支配する熱水化学環境に関与したかは推定困難なため、各組織を用いて実験を行った。その結果、顕著な温度依存性(300℃で約60mmol/kg、400℃で約2mmol/kg)と組織依存性(ガラス:2.8mmol/kg、スピニフェックス:約20mmol/kg、かんらん石:60mmol/kg)が確認された。
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