2010 Fiscal Year Annual Research Report
気相化学成長法による基板上の単層カーボンナノチューブ高速成長
Project/Area Number |
10J09231
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 馨 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 単層カーボンナノチューブ / CVD / 成長機構 / オストワルドライプニング |
Research Abstract |
酸化アルミニウム担体上にFeナノ粒子を担持しC2H2を原料としてCVDを行うことで、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)が基板上に垂直配向して数μm/sの速度でミリメータースケール成長する。ミリメータースケール成長の必要条件及び成長、停止機構を検討した。 現在までに、ミリメータースケール成長には酸化アルミニウム担体が必要であること、成長が一定時間後に急停止することが分かっており、成長中にSWCNT直径が単層構造を保ったまま平均1.7nmから3.7nmに増大することもわかっている。成長中のSWCNTの直径増大は触媒粒子径の変化によると考えられるとともに、成長中の触媒の構造変化は成長停止の原因のひとつとして考えられる。 今回、SWCNT成長の直接原料であるC2H2と希釈ガスのArのみによる単純な系での合成を確立した。そしてコンビナトリアル手法とリアルタイム観察を併用して触媒条件及び温度、原料分圧、添加物H2Oの影響を系統的に検討した。C2H2分圧を低く制御することで、適切な触媒条件下ではH2Oを供給しなくてもC2H2とArのみでSWCNTのミリメータースケール成長が可能なこと、H2Oの主な効果は原料を過剰に供給した時に触媒が失活するのを防ぐことがわかった。 またC2H2分圧によって成長持続時間の温度依存性は異なり、高いC2H2分圧では高温ほど長くなり、低いC2H2分圧では高温ほど短くなった。前者は触媒からのSWCNT析出を超える炭素供給があると触媒が炭化失活するためと理解でき、後者はオストワルドライプニングによる触媒粒子の構造変化に起因することが分かった。ミリメータースケール成長のためには二つの成長停止原因を考慮し、成長が持続する範囲内で合成する必要がある。二つの要因は本研究での合成系に限らず汎用的なものであり、高速かつ持続的なSWCNT成長に対する本質的な課題である。
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